平成19年11月10日
報告者:福岡 浩
(有限会社 業務改善創研)
平成21年度に介護保険制度の見直しが予定されていますが、その見直し議論の序盤戦が始まりました。
本題に入るまでに、この『介護サービス事業の実態把握のためのワーキングチーム』(WT)とはどのような目的で設置されているかを説明します。
第1回目の資料によれば、「介護サービスの安定的な運営と介護労働者の処遇向上により、介護サービスの質の向上を図るためには、介護サービスの経営と労働環境の実態を把握することが必要である。 事業所団体、労働者団体等からヒアリングを行い、介護サービス事業の経営の効率化と、将来を担う中核的な介護労働者の育成、定着率の向上を図るために必要な対応の検討の参考とすることを目的に、 社会保障審議会介護給付費分科会にWT(ワーキングチーム)を設置する。」とあります。
もう少し分かりやすく説明しますと、
介護保険制度や医療保険制度等の社会保障について審議する場が社会保障審議会で、
その中に「介護給付費分科会」という分科会があります。
この「介護給付費分科会」が介護給付費の改定に大きく関わる議論の場になります。
今回のWTは、その分科会の中に設置されたもので、第1回はすでに10月30日に開催されましたが、全3回の予定です。
主に事業所団体、労働者団体等からヒアリングを通じて、取りまとめる所掌は、
①介護サービス事業の経営方針について、
②介護労働者の定着を図るための措置について、等となります。
ヒアリング団体については、第1回10月30日に、社団法人日本介護福祉士会、日本ホームヘルパー協会、日本老荘組合連合会、
第2回11月8日に、有限責任中間法人日本在宅介護協会(在宅協)、有限責任中間法人「民間事業者の質を高める」全国介護事業者協議会(民介協)、NPO法人全国認知症グループホーム協会、
第3回11月13日に、社団法人全国老人福祉施設協議会、社団法人全国老人保健施設協会、社団法人全国訪問看護事業協会、
以上9団体が意見陳述することになっています。
特に今回(第2回)のヒアリング団体は、在宅サービスの事業者団体の意見陳述でしたので、大変興味深く傍聴しました。 最初に、民介協が意見を述べました。 意見を述べるというよりも、介護事業者の現状を切々と訴えたという印象です。 民介協という団体は、いわゆる地場の介護事業者で組織され、介護保険制度施行前から事業を営んできた法人が多く加入しているようです。 具体的には、ジャパンケアサービスが中心となり、大手介護事業会社に対抗する組織という側面もあります。
この民介協が主張したのは、2点に集約されています。 第一に、「賃金のアップ」で、在宅介護サービス基本報酬を、 現行単価より最低10%以上引き上げるよう要望していました。 二点目としては、「適正と不適正判断の見解統一」ということでした。 介護サービスの適正・不適正については国と都道府県と保険者間において判断がまちまちで、解釈通知やQ&Aで示している事例さえも保険者や都道府県が独自に判断していることもあると、訴えていました。
続いて、在宅協の意見陳述に移りますが、この団体は、先の民介協とは対抗軸を鮮明にする大手介護事業会社が中心に組織されています。
在宅協が強調している点は、訪問入浴介護事業所の看護師は、ほとんどが派遣による人材(非正規雇用98%)で、 その人件費負担が大きいこと、訪問介護事業所におけるサービス提供責任者は、72%が非正規雇用者で、定着率の著しく低いことでした。 このような運営状況下では、サービスの質を担保することが極めて困難であるとともに、 介護職員のモチベーションも上がらないことを訴えていました。
今回のWTでは、事前に各団体にはヒアリングの項目が示されていたようで、 各団体がWTメンバー(4名の委員)からの質疑に応答しました。 また、厚生労働省老健局長はじめ、老人保健課長、振興課長、計画企画課長等々も出席していて、 各団体の意見陳述に対し課長の一部からも質問がありました。 特に事業者の利益率をどのくらいに見ているのかという具体的な諮問もあり、興味深く聞いていました。
さて、傍聴して感じた率直な感想を述べましょう。
介護現場では、介護職員の人材確保が大きな問題になっていることは周知の通りですが、その上に現職の従業者も介護業界から去っていく現状を鑑みれば、
当然、賃金を上げるために介護給付費の見直しは避けて通れません。
しかし、役人も給付額を上げるだけでは脳がないことが分かっているので、
「飴と鞭」の鞭をどのようにするかを考えるだろうと想像できます。
何をどう見直すかは徐々に見え始めてきましたので、今後も「介護給付費分科会」の動向に注目しましょう。
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