介護事業経営アドバイザー|福岡浩(介護事業運営・業務改善に関するコラム)

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介護事業経営アドバイザー 福岡浩のコラム

業務継続計画(BCP)を策定する前にやるべきこと

2019年末から続いている新型コロナの感染拡大は、今も変異を繰り返し、ワクチン接種の効果も 空しく様々な影響を与えています。時を同じくして、異常気象による豪雨災害や全国各地で頻発する地震は、年々増えています。

こうした状況下でも介護サービスが提供できるようにするために、国は2021年4月の運営基準一部改正で、「業務継続計画の策定等」という条項を運営基準に追加しました。
「感染症や非常災害の発生時において、利用者に指定訪問介護の提供を継続的に実施するために・・・・」(例:訪問介護)とあります。非常時でもサービス提供が継続できるように計画しておくよう求めています。

また、「非常時の体制で早期に業務再開を図るための計画を策定し、・・・・」とあることから、業務継続計画には、大きく2つの目的があることがわかります。

業務継続計画の目的

1つは、平時のサービスと同様に利用者にサービスを提供できるようにすること。
非常時の状況によっては、平時との差をどう解消するか、解消できるかということでしょう。ここで、「非常災害時の対応マニュアル」や「感染症対策マニュアル」が重要になります。

2つ目は、一時的にサービスを提供できなくなったとしても、早期に再開できるようにすること。
非常時に事業所そのものが機能しなくなることを想定し、それでも短期間で事業が再開できるよう計画することを求めています。それには、元々ある「年間事業計画」が重要なキーポイントになります。

この2つの目的を達成するために、事前に業務継続計画を策定しておくことを運営基準に定めています。

業務継続計画策定前にやるべきこと

さて、業務継続計画を策定する前にやるべきことがあります。それは、大きく分けて2つあります。

一つ目は、業務継続計画を策定する際に、事業所を運営する法人や会社の「経営計画」や事業所の「年間事業計画」を十分に理解し、計画に沿った事業運営ができているかどうかが重要です。
そもそも、毎年度の「年間事業計画」が策定されていなかったり、建前上、形式的に策定されていても、計画に沿った運営が実行されていなかったりすれば、業務継続計画の策定は極めて難しくなると考えられます。

小規模な介護事業者では、事業所を運営する会社、法人の代表者が事業所の管理者であり、サービス提供の現場に係わっている時間が長く、「年間事業計画」を策定していない事例が多いだろうと推察します。事業規模の大小に限らず、「経営計画」や「年間事業計画」は必須です。単に売上予算や売上目標を設定するだけではなく、前年度の実績をもとに次年度にどの程度の売上額が達成可能なのかを検討し、予算を決めます。売上予算という数字だけを決めるのではなく、売上予算を達成するために何をするかを計画します。それが「年間事業計画」です。

この「年間事業計画」があるかないかが業務継続計画の策定に大きく影響します。

ここからは、事業所に「年間事業計画」、会社、法人には「経営計画」があるという前提で話を進めます。

「年間事業計画」には、毎月の売上予算(売上額の目標)や予測される経費などが記載されています。月々の売上予算を達成するためにやるべきことが書かれているはずです。新規利用者の確保についてはどうするのか、介護職員の採用、運転資金の確保(資金繰り等)、人材育成の計画(研修計画等)や広告宣伝など、年間の事業運営に関する計画です。

「年間事業計画」や「経営計画」が詳細であればあるほど、業務継続計画を策定する際に参考になり、活用できます。

二つ目は、業務継続計画に紐づけられる2つのマニュアルです。その1つが、「非常災害時の対応マニュアル」です。異常気象による風水害、大震災による被害、火災などを想定した対応をできる限り、事業所の実情に合った具体的な対応マニュアルであることが重要です。もう1つは、感染症対策マニュアルです。これまでの「食中毒及び感染症の発生の予防及びまん延防止に関するマニュアル」より、詳細かつ事業所の現状を踏まえた具体的な感染症対策マニュアルであることが求められます。

この二つのマニュアルがあることにより、「業務継続計画」の中身が具体的かつ実践的な計画になります。

多くの事業所では、これまでマニュアルや各種記録書、計画書等のひな形を利用して、ほとんどそのまま使用してきました。マニュアルは、他事業所のものを流用したり、記録書も他事業所からサンプルをもらったりして、事業所の運営状況に合わなくても使用を続けてきました。

しかし、そのツケが重くのしかかってくるかも知れないのが、業務継続計画の策定です。

事業計画から業務継続計画を考える

業務継続計画の策定と言われても、どう書けばいいのでしょうか。というご相談やご質問に対して、「ひな形やサンプルを流用すれば、体裁だけの計画を立てるのは難しくないでしょうが、実効性に乏しい計画では、絵に描いた餅になります。」と、お答えしています。
さらに、「毎年、年間事業計画を策定し、年度末に計画の振り返りを行って、計画の予算(予定)と実績値(結果)の差を確認し、予算を達成するためのアクションプラン(行動計画)の実施状況を見直して、次年度の事業計画に反映していますか。」と聞きます。

事業計画をもとに業務継続計画を考えてみましょう。年度中に非常災害や感染症が発生し、サービス提供を中心とした事業運営の一部または全部が立ち行かない状況に陥ったと仮定します。その時、事業計画でやろうとしていた項目のうち、何を優先し、何を取り止めるかを考えます。こうした思考段階を踏んで、業務継続計画を策定した方が現実的な計画になると思いませんか。

インターネットを活用すれば、業務継続計画や事業継続計画の策定方法、ひな形やサンプルなどが容易に手に入りますが、あくまでも参考にするという程度に留めておくことをお勧めします。

※介護事業では業務継続計画としていますが、本来、一般的に「事業継続計画(BCP)」と言われています。

※参考になるかどうかわかりませんが、まだ、閲覧していない方は厚生労働省のホームページもご覧ください。
介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

2022年8月3日掲載

ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)

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