介護事業経営アドバイザー 福岡浩のコラム
実地指導は名称が「運営指導」に変わる
令和4年3月7日に『全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議』が、オンラインで開催されました。その中で、老健局総務課介護保険指導室の会議資料に、実地指導に関する記述がいろいろとありますので、確認しておきましょう。
1.「実地指導マニュアル」の改正について
- 今年度(令和3年度)中に介護保険施設等指導指針及び実地指導マニュアルの改正を予定しています。
- 「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針」を踏まえた、実地指導マニュアルの改訂を行い、標準化・効率化を進めます。
- 実地指導の指導方法を見直し、「介護保険施設等指導指針」も今年度中に改正します。
2.実地指導の指導形態の見直し
- これまでの実地指導では、運営指導と報酬請求指導の2つでしたが、今回の見直しで次の3つの 指導形態になる予定です。
- 介護サービスの実施状況指導
施設・設備や利用者等に対するサービスの提供上を含む個別サービスの質に関する指導
- 最低基準等運営体制指導
運営基準に規定する運営体制に関する指導
- 報酬請求指導
加算等の介護報酬請求の適正実施に関する指導
上記のうち②、③は実地でなくても確認できる内容について、オンライン会議システムを活用して行うことが可能である旨を実地指導マニュアルに明記する予定です。
このことにより、実地指導の名称を「運営指導」と改められます。
3.運営指導(実地指導)の実施頻度
- 原則、指定の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上とします。これまでも努力義務として都道府県や指定都市、保険者に求めていますが、「義務化」する可能性があります。
4.運営指導の標準化。効率化を推進する観点から、以下についてマニュアルに明記
- 標準的な確認すべき項目・文書による実施
・確認する文書類は限定されますが、記録類に記載されている内容を精査すると考えられます。
- 標準化・効率化により所要時間の短縮
・概ね2~3時間を目安に実施しますが、施設、事業所の運営状況によって所要時間にも差があると考えられます。
- 同一所在地や関連する法律に基づく指導・監査の同時実施
・指導監査の日程調整に寄りますが、可能な限り同じ事務所内で2つの事業を運営している場合などは同時に実施することになります。
- 確認する書類の対象期間の限定
・明確な期間の限定が定められていないようですが、「前年度一年間」とか。「過去一年間」などの限定となるのではないかと考えられます。
- 電磁的記録により管理されている書類等のディスプレイ上での内容確認
・書類等をデジタルデータで管理している場合には、ディスプレイ上で内容を確認することになります。将来的に、事業所のデジタルデータをリモートで閲覧するようになるかもしれません。
- 事務受託法人の活用
・都道府県、指定都市、中核市や保険者などの市町村が直接行う指導は、行政の大きな負担になりつつあり、実地指導(運営指導)の一部もしくは全部を委託して行う方法です。
例えば、横浜市などは、指導の一部を公益財団法人かながわ福祉サービス振興会に委託していますが、指導の質を検証しているかどうかはわかりません。
実地指導(運営指導)に限らず、集団指導講習会も、コロナ渦で実施できず、都道府県や市町村のホームページ等に講習会の資料を掲載し、施設、事業所にその閲覧を求めています。今後は、集団指導もオンライン会議システムで実施するようになると思われます。
そうなると、介護事業者は事業所内のICT化を進め、オンライン実地指導(運営指導)やオンライン集団指導講習会に対応できるよう準備する必要があります。令和4年度は、そうした大きな変化の波が押し寄せるのではないでしょうか。
2022年3月13日掲載
ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)
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