介護事業経営アドバイザー|福岡浩(介護事業運営・業務改善に関するコラム)

介護コンサルティングネットへのお問い合わせ

利用者本位のサービスを実現するために、介護事業運営の仕組みを改善します。

ホーム2022年2月

介護事業経営アドバイザー 福岡浩のコラム

介護事業の大規模化が進む(2)〜基準の改正による変化をみる~

介護事業の大規模化が進む(1)では、『施設・事業所数(基本票)』による経年変化を見ながら、事業所が大幅に減少しているサービスなどを取り上げ、撤退を余儀なくされるのは、小規模な事業所ではないかと申し上げました。

前回も述べましたが、厚生労働省の資料で「介護事業の大規模化」についての記述が認められるのは、『平成26年3月 地域包括ケア研修会 報告書(抄)』(資料参照)にある、「サービス提供事業者の大規模化や事業者間の業務提携、複数の法人間の連携など・・・・・」ではないかと考えられます。

その後に開催された介護給付費分科会や介護保険部会等でも、頻繁に「介護事業の大規模化」に関する意見や議論がありました。当然、介護事業の大規模化に疑問を呈する意見もありましたが、次第に推進を容認する意見が多くなっていったと、筆者は受け止めています。

平成26年3月 地域包括ケア研修会 報告書(抄)
●訪問介護の運営基準はどう変わってきたか

さて、今回は基準の改正による変化について振り返ってみましょう。

最初に訪問介護の運営基準がどう変わってきたか、確認しておきます。

古い話になりますが、サービス提供責任者の配置要件は、当初、事業所の月のサービス提供時間450時間ごとに1名または、訪問介護員10名につき1名のサービス提供責任者が必要でした。また、常勤であることと訪問介護員養成研修修了者であることでした。

平成18年頃までは、訪問介護員10名につき1人のサービス提供責任者の配置か、月のサービス提供時間450時間ごとに1人を選択して運営していました。訪問介護員一人当たりの稼働時間が多ければ、10名未満で運営していましたが、450時間を超える可能性もありました。サービス提供責任者1人を配置して運営した場合の月間売上額はどの程度だったのでしょうか。当時として時間当たりの売上額を2,300~2,500円程で事業計画を策定していた記憶があります。それをもとに算出すると、2,500円×450時間=1,125,000円になりますが、事業規模としては最小であり、せめてサービス提供責任者2名以上で900時間のサービス提供を当面の目標としている事業所が多かったと思います。

平成18年10月現在の統計『訪問介護事業所におけるサービス提供責任者数階級別事業所数』をみると、1人サービス提供責任者の事業所数は、全体の43.3%でした。2人配置の事業所が28.2%で、両者を合わせると7割強が月間売上額200数十万円以下の事業所ということになります。このような状況は現在もあまり変わらないのではないかと思われます。

筆者の経験では、サービス提供責任者3人、訪問介護員30名で、月間売上額300万円以上を目指し、最終的にサービス提供責任者4人で、450万円以上になりました。しかし、現在の訪問介護事業所を取り巻く経営環境では、同じような結果を得ることはかなり難しいでしょう。

サービス提供責任者の人員基準見直し 訪問介護事業所数

現在、サービス提供責任者は常勤で介護福祉士等の資格取得者です。固定費に占める人件費に見合った収支を考え、特定事業所加算などさまざまな加算を取得しながら、売上を構成しなければなりません。以前よりも格段に事業所運営のマネジメント力が要求されています。

ここで、「訪問介護の基準」を確認しておきましょう。

サービス提供責任者一人につき利用者50名を担当するには、3項目の要件を満たす必要があります。
〇常勤のサービス提供責任者3人以上配置、
〇サービス提供責任者の業務に主として従事する者を1人以上配置、
〇サービス提供責任者が行う業務が効率的に行われている場合、
の3項目です。

これだけの要件を満たすのは決して簡単なことではありません。しかし、こうした要件を設定する背景、意図を考えてみましょう。

利用者50名を担当する3人のサービス提供責任者を配置した場合には、利用者数が150名となります。介護給付費分科会の資料を作成している厚生労働省老健局の考え方としては、サービス提供責任者3人、利用者150名という規模が、訪問介護事業所のイメージなのでしょうか。3項目の要件を満たさない場合でも、サービス提供責任者1人につき40名の利用者ですから、サービス提供責任者が3人で利用者120名となります。

ところが、『訪問介護 1事業所1月あたりの受給者数、費用額』をみると、現実には平成31年で利用者数(青いグラブ=受給者数)が30名程度で、費用額(赤いグラブ)も250万円に届かない状況です。介護保険外サービスや介護予防サービス介護予防日常生活支援総合事業などのサービスを提供している場合でも、月間の売上額が300万円程度ではないかと推定されます。

訪問介護事業所の実態は、このような事業運営規模であることを踏まえて考えると、厚生労働省老健局は、介護事業の大規模化を進め、利用者100名以上、サービス提供責任者3名以上の事業規模の訪問介護事業所を念頭に、今後の介護報酬改定や制度改正を進めるのではないでしょうか。

介護事業者の皆様は、介護事業の大規模化の進展を注視しつつ、できる限り各種加算を取得し、売上額を増やす努力が必要になります。

訪問介護の基準

介護給付費分科会第182回資料2より

訪問介護事業所費用額
●居宅介護支援の運営基準改正による変化

居宅介護支援事業所の管理者の要件は、長らく介護支援専門員資格でしたが、平成30年度介護報酬改定に関する審議の過程で、社会保障審議会の介護給付費分科会第143回(平成29年7月19日)の『資料1 居宅介護支援「現状・課題」』に次のような記述があります。

「2.居宅介護支援事業所の管理者の役割の明確化」の2つ目の項目に、

○ 居宅介護支援事業所の管理者が主任ケアマネジャーである割合は44.9%であるが、管理者が主任ケアマネジャーではない場合と比較すると、事業所のケアマネジャーに対する同行訪問による支援(OJT)の実施や、ケアマネジメントに関する相談の時間を設けている割合等が高くなっている。

とあります。

居宅介護支援事業所の管理者が主任介護支援専門員である割会が44.9%で、ケアマネジメントの質を高めていることが実証されているとしているようです。管理者が主任介護支援専門員である事業所は、概ね特定事業所加算を取得していることが容易に想像できます。そうした背景から、居宅支援事業所の管理者は主任介護支援専門員であるべきだという議論が進んだと考えられます。裏を返せば、主任介護支援専門員が雇用できない事業所は必要ないという意味でもあります。厚生労働省が推進する「介護事業の大規模化」を象徴する議論の開始だと言えます。

また、同資料の『論点』をみると、4項目ある中の冒頭には、以下のように

○ 居宅介護支援事業所における人材育成の取組を促進する観点から、居宅介護支援事業所の管理者のあり方についてどのように考えるか。

とあります。

居宅介護支援事業所の管理者に、人材育成の取組を求めるには、主任介護支援専門員であるべきではないかという論点で議論していくことになります。

これだけ要件を引き上げられると、居宅介護支援事業を続けられなくなる事業所が出てくることは織り込み済みで、審議が進行していったということです。

ちょうど、居宅介護支援事業所数が減少し始めた時期とも重なります。平成30年(2018年)の居宅介護支援事業所数は、前年(平成29年)より317少なくなり、さらに令和元年(2019年)は、前年(2018年)より838も減りました。その後も事業所数が増えることはなく、減少傾向が続いています。

廃止した事業所に在籍していたケアマネジャーは、他の事業所に再就職するだろうと考えるのが妥当ですから、それを見越した「介護事業の大規模化」だと言えなくもありません。

居宅介護支援 居宅介護支援現状・課題 居宅介護支援論点

※追記

先のコラム『介護事業の大規模化が進む(1)〜施設・事業所数の経年変化をみる~』が掲載された後に、厚生労働省から新たな資料『令和2年介護サービス施設・事業所調査:結果の概要』(12月28日)が公表されましたので、掲示しておきます。

令和2年10月1日現在の「施設・事業所数(基本票)」です。

平成30年(2018年)の介護報酬改定・基準改正等による影響として、施設、事業所数に表われていると考えられる点もありますが、それ以前からの経年変化によるものもあります。

居宅介護支援の事業所数は、前年の令和元年から、834減少し、ついに40,000事業所を切りました。834減ったというより、正しくは新規開業の事業所よりも廃業した事業所の方がはるかに多かったということになります。したがって、廃業した事業所数は、834以上あると考えられます。

また、訪問介護の事業所数は、平成29年(2017年)をピークに2年連続減少していましたが、令和2年に増加に転じています。あくまでも推測ですが、居住系施設に併設される訪問介護事業所が微増したのではないかと思われます。

気になるのでは、地域密着型サービスの主要なサービスであるはずの地域密着型通所介護と認知症対応型通所介護の減少です。地域密着型通所介護について、一時期増え過ぎた事業所のサービス提供量(供給量)の調整期が続いているのではないかと言えます。一方、認知症対応型通所介護については、以前から採算性の問題があり、単独型の事業所は経営的に立ち行かなくなった半面、認知症共同生活介護、いわゆるグループホームに併設している事業所は、何とか存続している状況ではないかと思われます。当然ですが、認知症対応型通所介護の減少数と、介護予防認知症対応型通所介護の減少数がほぼ同じような数であることから、予防も介護も認知症対応型通所介護の根本的な見直しが必要ではないかと思います。国の認知症施策が順調に進んでいるとは言い難い状態なのではないでしょうか。

施設・事業者数

2022年2月22日掲載

ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)

標準化・効率化方針でこう変わった! 実地指導 基本と実務対応
訪問介護・通所介護・居宅介護支援選ばれる事業所運営の鉄則
福岡浩
日総研出版
売り上げランキング: 680,474

「介護事業経営アドバイザー福岡浩のコラム」の先頭に戻る