介護事業経営アドバイザー|福岡浩(介護事業運営・業務改善に関するコラム)

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介護事業経営アドバイザー 福岡浩のコラム

介護事業の大規模化が進む(1)〜施設・事業所数の経年変化をみる~

厚生労働省の資料で「介護事業の大規模化」についての記述が認められるのは、『平成26年3月 地域包括ケア研修会 報告書(抄)』(資料参照)にある、「サービス提供事業者の大規模化や事業者間の業務提携、複数の法人間の連携など・・・・・」です。
これ以降、介護給付費分科会や介護保険部会等で、度々「介護事業の大規模化」に関する意見や議論が断続的にありました。

地域包括ケア研究会報告

介護給付費分科会や介護保険部会等では、『地域包括ケアシステムの推進』を話し合う時に、地域包括ケアシステムの担い手となる地域における介護事業者の効率的かつ効果的なサービス提供が欠かせないという意見が聞かれるようになりました。それには、小規模事業者が数多く存在するより大規模化や業務提携、複数の法人間の連携が必要だという考え方が大勢を占めるようになってきたようです。

また、別の側面からも大規模化を進める理由があります。それは実地指導の実施率の低さを少しでも改善するという狙いです。
事業所数が増え過ぎたために実地指導の実施が追い付かいないという悪循環に陥り、実地指導そのものの効率的かつ効果的な実施を目指しながら、事業所数の抑制も必要になってきたと推測できます。

『介護報酬改定の改定率について』をみると、平成27年度(2015年)の介護報酬改定は、平均2.27%のマイナス改定となり、その後、徐々に介護事業者の事業運営の厳しさが増していきました。

また、「改定に当たっての主な視点」には、「中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化」とあります。軽度者を中心に利用者を集めていた地域密着型通所介護の事業所数は、平成28年(2016年)に21,063でしたが、平成29年(2017年)には、20,492まで激減しました。マイナス改定が、事業所数を571と大幅に減らした要因と言えます。同じように、介護予防通所介護の事業所数も、41,448から40,780と、マイナス578まで減りました。

続いて、平成30年(2018年)度の介護報酬改定では、プラスといっても僅か0.54%で、事業運営の厳しさは変わらなかったのではないでしょうか。
また、この時の「改定に当たっての主な視点」に掲げられた4項目のうち、「多様な人材の確保と生産性の向上」は、小規模な介護事業者にとっては難しい課題であり、ある一定の事業規模を想定した視点ではないかと考えられます。
もう一点、「介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保」に至っては、制度の安定性や持続可能性を担保するには、制度を支えている介護事業者の経営規模が大きく関係するという見方を反映していると言えます。
経営が不安定な小規模事業者より、事業の大規模化や事業者間の業務提携や連携が必要であることを示唆しているように受け取れます。

介護報酬改定改定率

平成30年(2018年)の「施設・事業所数(基本票)」をみると、前年(平成29年)から事業所数が減っているサービスが増えています。
介護予防サービス(地域密着型介護予防を含む)では、11サービスのうち5サービスで事業所数に減少傾向が見られました。同じように居宅サービスでは、訪問介護で事業所数が200の減少、訪問入浴介護で108の減少でした。地域密着型通所介護は、529の減少となり、小規模な事業所の撤退が目立ちました。実際には、平成29年(2017年)の「施設・事業所数(基本票)」を見ても、地域密着型通所の事業所数が激減しています。

一方で訪問看護ステーションは急増しています。平成28年(2016年)の事業数は9,525でしたが、平成29年(2017年)には、10,305、平成30年(2018年)はさらに増え、10,884、令和元年(2019年)で11,580となりました。訪問看護ステーションの急激な増加は、在宅の要介護者の重度が進み、医療的ケアのニーズが高まりつつあることが窺えます。しかし、医療的ケアのニーズが充足し、事業所が飽和状態になれば、事業規模が小さい事業所の淘汰が始まるかも知れません。

また、居宅介護支援事業所も減少となりました。平成29年に事業所数41,273だったのが、翌年(平成30年)には、40,956と、272減りました。

令和元年(2019年)になっても、事業所の減少傾向は続いています。訪問介護はさらに減り、平成30年(2018年)の35,111から34,825と、265の減少となりました。減少幅が大きかったのは、居宅介護支援事業所で、40,955から40,118と、838も減りました。

訪問介護事業所が撤退する例としては、訪問介護員の高齢化や新たな人材確保が困難となり、利用者数を増やせなくなった事業所が多くなっているようです。その結果、事業規模を維持することすら難しい状況に陥ってしまい、事業継続を断念するという話を耳にするようになりました。

居宅介護支援事業所では、特定事業所加算を取得できない事業所や、ケアマネジャーが一人または二人で運営しているような小規模事業所で、常に赤字が続いている場合には、居宅介護支援単独の事業運営はほぼ不可能です。他のサービスと併設している場合でも、他のサービスの収益率が低下すれば、継続は難しくなります。

今後数年の間、事業所数が減るサービスと増えるサービスが明確になるでしょう。

例えば、小規模多機能型居宅介護は増えていますが、それ以上に看護小規模多機能型居宅介護が増えています。訪問看護ステーションとの連携による事業運営が進んでいるのでしょうか。

また、地域密着型サービスの要でもある認知症共同生活介護(グループホーム)も徐々に増えています。 こうした傾向から、介護保険サービスの中でも医療系もしくは医療との連携が欠かせないサービスの充実にシフトしていくのではないかと思います。同時に介護事業の大規模化がさらに進んでいくという見方ができます。

介護報酬改定改定率

厚生労働省 『平成29年介護サービス施設・事業所調査の概況』より

介護報酬改定改定率

厚生労働省 『平成30年介護サービス施設・事業所調査の概況』より

介護報酬改定改定率

厚生労働省 『令和元年介護サービス施設・事業所調査の概況』より

2021年12月19日掲載

ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)

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