先日、久しぶりにある訪問介護事業所のご依頼により、『実地指導の標準化・効率化に対応した介護事業所運営』という題目で研修講師としてお招きいただきました。 新型コロナウィルス感染対策を取りながらも不安がある中で、リモート研修ではなく厳重な対策を施した少人数の研修でした。 研修の対象者は訪問介護事業所の管理者、サービス提供責任者他10数名。一定の距離をとり、 マスク着用のままで2時間ほど話しましたが、受講者の反応(リアクション)が確認でき、理解できているかどうかを直に感じながら、研修を進めました。
ご依頼を受けた時は、これまではこのテーマの講師依頼があまりなかったので、少し驚きましたが、ご依頼の趣旨は明確でした。 「実地指導について正しく理解ができていない」という問題意識と自覚があり、今回の研修を熱望している様子が伝わってきました。
さて、このコラムでは、これまで研修やセミナーの講師として誰に何をどのように話したか、その結果、どうなったかということを書くことはほとんどありませんでした。 介護事業所や介護施設の個別案件をコラムに書かないという私なりのルールがあるからです。 しかし、今回は、意外な事実が分かりましたので、研修を終えて分かったことをまとめてみました。
ご存じの通り、昨年(令和元年)5月30日に、 『介護保険最新情報Vol.730「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」』が、厚生労働省老健局総務課介護保険指導室より発出されました。 実地指導の在り方、実施方法などが大きく変わる方向性を示した通知文は、都道府県、指定都市、中核市の介護保険施設等指導監査担当課長宛てに発信されましたので、 実地指導の実施方法等が徐々に変わっていくだろうと感じた介護施設、介護事業所の関係者の方も少なくないと思います。
介護事業所の管理者やその他の従事者の方々が、「実地指導」と聞くと、何か恐ろしいもの、難しいこと、面倒なことという印象があり、多分に先入観があるようです。 そうした中で、今回の研修講師を引き受けるにあたって、できる限りわかりやすくお話しすることを心掛けました。 その結果、研修終了後に、「わかりやすかった」や「今までわからなかったことが分かった」、「実地指導が何のためにあるか、よくわかった」等などの感想が聞こえてきました。
そこで私が、今回の研修でわかったことは、
という3つの事実です。
そのうえで、私が研修の中で提案したことは、日頃から事業所運営の改善を進め、実地指導がいつあっても慌てない「指摘事項ゼロを目指しましょう」ということでした。 実地指導直前の「実地指導対策」では間に合いません。 その理由も研修のなかで説明しました。実地指導における標準確認項目や標準確認文書は、以前より絞られて少なくなりましたが、実地指導担当者の確認の視点も変わりつつあると考えられます。 事業所全体として運営基準を理解していることが、指摘ゼロを目指す出発点になります。
2020年10月20日掲載
ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)