前回に続き、今回は5年前に訪問調査した事業所、サービスが現在どうなっているか、調べてみました。
介護サービス情報の公表制度が始まった2006年から10年目になる2015年に、私は主任調査員としてこの一年間で38サービス、31事業所を訪問し調査を担当しました。 それから5年経った現在、この38のサービスがどうなっているか、調べてみました。
調査員が個人的にすべての調査記録を保持することはできませんが、月ごとに訪問調査を行った事業所、施設で調査対象となったサービスについては予定表として記録が残っていました。 その調査時の記憶を頼りに検証してみました。
調査時に「今後も継続していかれるだろうか」と、疑問に感じた事業所もいくつかありました。 サービスの質の問題以外に事業経営の行き詰まりから撤退したと思われる事業者が数か所ありました。
さて、下記にその詳細を表にまとめましたので、ご覧ください。
サービス種類名 | 2015年訪問調査の件数 | 2020年同じ事業所名で存続が確認できなかった件数 | 2020年同じ事業名で継続が確認できた件数 |
---|---|---|---|
訪問介護 | 9 | 3(2) | 6 |
通所介護 | 6 | 1 | 5 |
訪問看護 | 4 | 1(1) | 3 |
訪問リハビリテーション | 1 | 0 | 1 |
通所リハビリテーション | 1 | 0 | 1 |
認知症対応型通所介護 | 1 | 1 | 0 |
認知症対応型共同生活介護 | 1 | 0 | 1 |
定期巡回随時対応型訪問介護 | 1 | 0 | 1 |
特定施設入居者生活介護 | 3 | 0 | 3 |
居宅介護支援 | 6 | 0 | 6 |
福祉用具貸与 | 3 | 1(1) | 2 |
特定福祉用具購入 | 2 | 0 | 2 |
合計 | 38 | 7(4) | 31 |
※( )内の数字はM&Aにより継続している事業所数
まず、訪問介護です。私が担当した2015年度の調査件数が9件でした。5年後の現在、事業の継続が確認できたのは6件。
事業所名が確認できない3件の訪問介護のうち、2件は運営する会社が別の会社に吸収合併(M&A)されて、 事業所名が変わっていました。 残りの1件は運営法人が存続していて、訪問介護以外の介護保険サービスの事業を継続していることが確認できました。
通所介護では、止めてしまったと思われる1件は、医療系の法人が運営していたデイサービスセンターでした。 調査時の記憶では、医院の看板で集客しようとしている印象があり、それが思うようにできていない様子がわかりましたので、介護サービスに見切りをつけて廃止したと思われます。
元々事業所数としては少ない認知症対応型通所介護の調査を1件だけ担当しましたが、今現在は継続していませんでした。 社会福祉法人が特別養護老人ホーム以外に複数の居宅サービスに手を広げた結果、早々に採算性が悪い本サービスに見切りをつけたのではないかと推測できます。
訪問看護は、調査した4件のうち、1件がなくなりましたが、M&Aにより事業所そのものは存続していて、事業所名が変わっていました。 同じく調査した福祉用具貸与の事業所3件のうち、1件がM&Aにより事業所そのものは継続していることが確認できました。
結果として、2015年度に38サービスの調査を担当し、そのうち現在でも同じ事業所名で事業を継続しているのは、31件で、8割程度です。
事業所名が確認できない事業所で、M&Aにより別の会社が事業所を引き継ぎ、事業を継続して運営いるのは4件ですから、実質的に姿を消したのは3件となります。 訪問介護1件、通所介護1件認知症対応型通所介護1件です。
この数年、事業を廃止しようとする法人からその事業を買収したり、単純に譲り受けたりして引き継いで事業を継続する例も増えているようです。 脆弱な経営体質では、安定的な経営が難しく、結果的に資金が豊富な大手の事業者が触手を動かしているように見えます。
2020年7月25日掲載
ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)