介護事業経営アドバイザー|福岡浩(介護事業運営・業務改善に関するコラム)

介護コンサルティングネットへのお問い合わせ

利用者本位のサービスを実現するために、介護事業運営の仕組みを改善します。

ホーム2020年3月_2

介護事業経営アドバイザー 福岡浩のコラム

社会保障審議会介護給付費分科会 第176回(令和2年3月16日)資料から訪問介護事業所の経営状況を探る

2021年(令和3年)4月に予定されている介護報酬改定は、2020年度の制度改正(2021年施行)に沿って議論が始まりました。

その中で、今回は3月16日に開催された介護給付費分科会の配布資料1、2をもとに、様々な数値から訪問介護事業所の経営状況を確認してみたいと思います。

その前に介護保険制度の20年を振り返ってみましょう。

(資料1「介護分野をめぐる状況について」P.2)『これまでの20年間の対象者、利用者の増加
65歳以上の被保険者の増加 2000年4月末 2019年4月末
第1号被保険者数 2,165万人 3,528万人 約1.6倍
要介護(要支援)認定者の増加 2000年4月末 2019年4月末
認定者数 218万人 659万人 約3.0倍

65歳以上の被保険者の増加」が、1.6倍となっていますが、すでに数年前から、後期高齢者が前期高齢者を上回る状況になっています。

また、「要介護(要支援)の認定者の増加」では、平成31年4月末に659万人です。この19年間で約3.0倍となり、このうち軽度の認定者数の増加が著しく、今後も増え続ける傾向があります。

前述の資料1のP.9に、『総費用等における提供サービスの内訳(平成30年度)金額』という表があります。これを見ると、訪問介護の費用額9,006億9,400万円、利用者数1,456,700人、事業所数33,176となっています。

平均的な訪問介護事業所の経営状況

このデータをもとに、訪問介護事業所の一事業所の平均利用者数を算出すると、43.91人となります。

平均的な訪問介護事業所が、約44人の利用者に訪問介護サービスを提供していることになります。
事業所の人員体制としては、管理者兼サービス提供責任者ともう1名で、サービス提供責任者計2名程度、訪問介護員が15名程度ではないかと考えられます。

売上額は、費用額9,006億9,400万円を事業所数33,176で除して算出すると、27,148,963円となり、これが年間の報酬総額です。 これに利用者負担分の一割分を加えると、30,165,515円になりますので、12で除すると、月平均売上額が出ます。 平成30年度の訪問介護一事業所当たりの月平均売上額は約2,513,800円となります。 この数字は、あくまでも訪問介護事業所の平均値ですから、平均月間売上額が250万円以下であれば、かなり厳しい事業運営ではないでしょうか。

この数字を見て、訪問介護の関係者の皆様はどう思われるでしょうか。 事業として成り立っているのか、どの程度の利益があるのか、今後もこの状態が続くとしたら、どうなるのでしょうか。

さて、もう一つの気になるデータを見てみましょう。 同じく、第176回社会保障審議会介護給付費分科会 (令和2年3月16日)の資料から、資料2のP.2以降に訪問介護に関する概要が紹介されています。

訪問介護事業所は減少傾向か?

P.8に『訪問介護の請求事業所数』というグラフがあります。 これを見ると、平成29年度の事業所数が33,445件となっていて、この年がピークです。 平成30年度には、161件減って33,284件となり、さらに平成31年度は、前年度から106件減り、33,178件となります。 明らかに新規に開設した事業所よりも廃止、休止した事業所の方が多く、事業所総数が減少しつつあるということです。

訪問介護事業所数の減少傾向は今後も続くのでしょうか。また、減少している要因は何でしょうか。必ずしも人手不足だけが原因とは考えられません。

これまでの介護報酬改定の改定率だけを見ると、平成27年度の改定率がマイナス2.27%、平成29年度に介護人材の処遇改善(1万円相当)として、 1.14%のプラス、直近の平成30年度には、0.54%のプラス改定でした。 平成30年度の介護報酬改定では、訪問介護は身体介護の基本単位数がわずかに上がり、家事援助の方は下がりました。

昨年、処遇改善で1.67%、消費税対応で0.39%のプラスでしたが、事業収益が改善するほどの改定ではなく、 やはり平成27年度の引き下げがきっかけとなり、加算を取得できない事業所はより経営が厳しくなり、廃業しているのではないかと考えられます。
特に事業が小規模で介護職員処遇改善加算1が取得できなかったり、その他の加算も算定できていなかったりする事業所は、徐々に売上額が減少し、 慢性的な人手不足などが常態化して経営環境が悪化した結果、廃業に追い込まれた可能性が高いと言えます。

財務省を中心とした社会保障費全体を抑制する政策が進行しているなかで、2021年度の介護報酬改定がプラスになるとは到底考えられません。

前述の一事業所平均利用者数44人、サービス提供責任者2名程度、訪問介護員15名程度で、一事業所当たり月平均売上額が約250万円では、 多くの小規模事業所が「事業の大規模化、効率化の推進」の波に飲み込まれる恐れがあります。
数年後に、さらに事業所数が減った場合には、前述の平均値の1.5倍以上の事業規模になるのではないかと予想します。
利用者数60~70人、サービス提供責任者3名以上、訪問介護員25~30名、月間平均売上額380〜500万円、という規模が、筆者が勝手に思い描く訪問介護事業所です。
その理由は、20年間に介護報酬改定が6回、消費税引き上げ等に関係する改定を含めると10回の改定があり、介護事業の経営環境は目まぐるしく変わりました。 これに長引く人材不足などの外的要因も加わり、小規模事業所が立ち行かなくなってきました。
残念ながら、この大きな流れはしばらく続くと考えられます。
悪いことに、昨年5月に「実地指導の標準化・効率化等の運用指針」が発出されたことにより、実地指導の実地件数を増やす方向性が示されているため、 今後は実地指導で指摘事項が多かった事業所ほど、それがきっかけで指定更新時期に撤退する事業所が増えるのではないかと思います。

2020年3月31日掲載

ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)

訪問介護・通所介護・居宅介護支援選ばれる事業所運営の鉄則
福岡浩
日総研出版
売り上げランキング: 680,474

「介護事業経営アドバイザー福岡浩のコラム」の先頭に戻る