介護事業経営アドバイザー|福岡浩(介護事業運営・業務改善に関するコラム)

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介護事業経営アドバイザー 福岡浩のコラム

「実地指導の標準化・効率化等の運用指針」による実地指導は単なる対策では通用しなくなる

昨年5月29日に、厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長から、各都道府県、指定都市、中核市の介護保険施設等指導監査担当課長宛てに「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」が発出されました。
その詳細ついては、翌5月30日付けの介護保険最新情VOL.730で確認できます。
しかし、この指針の内容を読んで、正しく理解している介護事業者はどのくらいいるのでしょうか。

これまで、「実地指導対策」をテーマにした出版物やセミナー等が多数ありましたが、そうした一時的な対策では実地指導に対応できなくなる可能性が出てきました。
その理由は、前述の「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」をよくよく読んでみると分かります。

また、2020年1月、2月に実地指導を受けられた通所介護事業所と訪問介護、居宅介護支援の事業者に、筆者がその時の様子をお聞きし、どのような事前準備をしていたかを確認しました。
両事業所の経営者や管理者が口々に言っていたことは、「事前に対策としてやったことは、あまり意味がなかった」ということでした。
「日々の業務を見直し運営基準の理解を深める必要があると痛感しました。」とも言っていました。


さて、筆者は現在、日総研出版の隔月誌『訪問介護サービス』(隔月発行年間講読誌)に5回連載で、実地指導をテーマに執筆しております。その概要は以下の通りです。

第1回:実地指導は何のためにあるの? 実地指導の必要性(1・2月号)
第2回:実地指導の「今」?「標準化・効率化等の運用指針について」でどう変わったか?(3・4月号)
第3回:実地指導対策?人員編
第4回:実地指導対策?運営編1
第5回:実地指導対策?運営編2

すでに第1回、第2回は出版されていますが、書店売りではないために年間購読されている訪問介護事業所では、お読みいただいていると思います。

また、第3回、第4回、第5回では、筆者が「対策」という言葉を使いたくなかったにもかかわらず、「実地指導対策」という題目になっていますが、 編集者の意向により止むを得ず、このようなタイトルになりました。

しかし、内容は根本的な事業所運営の見直し、改善などについて詳細に解説しています。
前述の「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」をもとに、各「標準確認項目」や「標準確認文書」について、 詳しく解説していますので、訪問介護以外の介護保険事業所にとっても参考にしていただけると思います。

実地指導の実施を知らせる通知文が届いた介護事業所の管理者等が最初に考えるのは、どんなことでしょうか。

その多くは、「実地指導を何とか問題なくやり過ごしたい」という思いや考え方に基づいて行動を起こします。
その結果、その場限りの間に合わせの「実地指導対策」が始まります。
実地指導担当者が何を見るか、どこを見るか、様々な想定をもとに記録類を見直したり、書き直したりして、実地指導前の数週間は毎日残業という状態に陥ります。
また、すでに実地指導を受けた事業所関係者からの情報を頼りに様々な対策を執り行います。

その結果、成果が全くなかったということはないとしても、実地指導が終われば、実地指導前の日常業務に戻り、事業運営が大きく改善するようなことはあまりないかも知れません。
実地指導後に行政から何らかの指摘事項があったとしても、その指摘事項が十分に理解されなかったり、 理解できたとしても十分な改善に結びつかなかったりすることも多々あるでしょう。
指摘事項の改善が不十分でも行政からのさらなる改善を求められることもあまりないようです。
そうして6年後には、また実地指導を迎えるという繰り返しになります。

しかし、前述の「介護保険施設等に対する実地指導の標準化・効率化等の運用指針について」を読むと、これまでとは違う実地指導になることがわかります。


そもそも、なぜ、「実地指導の標準化・効率化」なのでしょうか。
それは、平成29年度の実地指導の実施率が全国平均で17.2%と、極めて実施件数が少ないことが理由の一つです。
そのほか、実地指導そのものに、各地で特有のローカルルールが発生していて指導内容にもその差が出ていました。
また、実地指導の対象事業所が多く、限られた人員で指導を行うには、限界があるという行政側の事情もあります。
そうしたことから、実地指導の標準化を図り、指導に要する時間を短縮して、より多く実施し件数を増やすことを目的に、実地指導方法を改めることになりました。

そうなると、実地指導の時間が短くなり、確認する項目、確認する文書も少なくなるから、簡単で楽になるだろうと思われるかも知れませんが、決してそうではありません。
むしろ、標準化した確認項目、確認文書によっては、見る視点が深まる可能性があります。

究極的には、運営基準を十分に理解しているかどうか、運営基準に沿って事業が運営されているかどうかを確認する実地指導になるだろうと理解した方がよいのではないでしょうか。

これで、今までの実地指導対策では通用しなくなるだろうということがお分かりいただけたと思います。

究極の実地指導対策は、運営基準を事業所全体で理解し、事業運営の改善に努めることです。

2020年3月12日掲載

ライター:介護事業経営アドバイザー 福岡浩(元有限会社業務改善創研 介護コンサルタント)

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