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有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について

平成30年3月30日に厚生労働省老健局振興課長より、老振発0330第2号『「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の一部改正について』が各都道府県介護保険主管部(局)長宛に発信されました。

いわゆる「老計第10号」が一部改正され、身体介護における「自立生活支援のための見守り的援助」の明確化を行うため、見直しを行ったことを通知しました。

では、どこがどう変わったのか、訪問介護事業所の管理者とサービス提供責任者は十分に理解しているのでしょうか。 また、ケアマネジャーもこの一部改正については詳細を理解しておかなければなりません。

すでにこの一部改正について確認し十分に理解しているという方ももう一度復習の意味で、その重要な項目を確認しておきましょう。

では、改正された箇所を見てみましょう。(改正点は赤字下線部分)
身体介護とは、
①利用者の身体に直接接触して行う介助サービス (そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)、
②利用者のADL・IADL・QOLや意欲の向上のために利用者と 共に行う自立支援・重度化防止のためのサービス、・・・・・・

これまで日常生活動作能力(ADL)だけでしたが、ADLに加えてIADLとQOLが併記されました。

『身体介護に重点を置いて報酬を引き上げるとともに、生活機能向上連携加算の見直し、「自立生活支援のための見守り的援助」の明確化、 訪問回数の多い利用者への対応を行うことにより、自立支援・重度化防止に資する訪問介護を推進・評価することにしている』と書かれた通知文を読むと、 今回の報酬改定の目的がよくわかります。

IADL(手段的日常生活動作)を併記したということは、厚生労働省がIADLの尺度としている以下の8項目がより重要になります。 これまでのADLだけを中心に自立支援を目指していた「老計第10号」とは大きく変わったことを理解しておく必要があります。

その8項目です。
1.電話を使用する能力(自分で番号を調べて電話をかけるか、など)
2.買い物(すべての買い物を自分で行うか、など)
3.食事の準備(自分で献立を考え準備・給仕までするか、など)
4.家事(日常的な範囲のことをすべて自分で行うか、など)
5.洗濯(すべて自分で行うか、など)
6.移送の形式(自分で運転したり公的機関を利用して旅行したりするか、など)
7.自分の服薬管理(適正な量の薬を規定の時間に飲めるか、など)
8.財産取り扱い能力(銀行手続きやお金の出し入れ等、お金の管理をすべて自分で行うか、など)

各項目がどの程度、「できているか」「できていないか」を十分にアセスメントし、報酬改定で見直しがあった「生活機能向上連携加算」を大いに活用して、 利用者の重度化防止を進める事業者を評価するという考え方だと受け止めるべきです。

この8項目に関連する「老計第10号」の項目は、具体的に次のように一部改正となりましたので、アセスメントや訪問介護計画書の作成についても見直す必要があります。

1-6 自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助(自立支援、ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)
  • ベッド上からポータブルトイレ等(いす)へ利用者が移乗する際に、転倒等の防止のため付き添い、必要に応じて介助を行う。【新設】
  • 認知症等の高齢者がリハビリパンツやパット交換を見守り・声かけを行うことにより、一人で出来るだけ交換し後始末が出来るように支援する。【新設】
  • 認知症等の高齢者に対して、ヘルパーが声かけと誘導で食事・水分 摂取を支援する。【新設】
  • 入浴、更衣等の見守り(必要に応じて行う介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを含む)
  • 移動時、転倒しないように側について歩く(介護は必要時だけで、事故がないように常に見守る)
  • ベッドの出入り時など自立を促すための声かけ(声かけや見守り中心で必要な時だけ介助)
  • 本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す。【新設】
  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理 整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)【新設】
  • ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助【新設】
  • 認知症の高齢者の方と一緒に冷蔵庫のなかの整理等を行うことにより、生活歴の喚起を促す。
  • 洗濯物を一緒に干したりたたんだりすることにより自立支援を促すとともに、転倒予防等のための見守り・声かけを行う。
  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行うベッドでのシーツ交換、布団カバーの交換等【新設】
  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う衣類の整理・被服の補修【新設】
  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
  • 車イスでの移動介助を行って店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助
  • 上記のほか、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うもの等であって、利用者と訪問介護員等がともに日常生活に関する動作を行うことが、ADL・IADL・QOL向上の観点から、利用者の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたもの【新設】

以上、1-6には、最後の項目を除き、15項目の具体的な例示があります。 15項目に共通しているのは、「声かけ」と「見守り」です。

「声かけ」は訪問介護員によって声のかけ方が違っていないか、確認してみましょう。 「声かけ」がいかに重要か、利用者の状態によって「声かけ」の仕方も変わります。 したがって、「声かけ」の種類はたくさん必要になります。そうした研修を行っている訪問介護事業所はまだ少ないのが現状です。

同様に「見守り」(「見守る」を含む)という文言も新設の6項目に見られます。「見守り」は観察力だけでなく、それによって判断したり、予測したり、想像したりすることになります。 また、1-6の冒頭にある『自立支援、ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態』にあるように、「見守り」の意味が具体的に示されています。 それは、いつでも手を差し伸べて介助できるよう準備しながら、見守るということです。

最後に、もっとも難しい改正点です。「IADL」とともに「QOL」(生活の質)が加わったのは、どういう意味を持つのでしょうか。 利用者の生活の質の向上とは、具体的に何をどうすればよいのでしょうか。 そもそも、利用者の現状を十分に把握していなければ、その利用者の生活の質が高いか低いかは分かりません。 そうなると、増々アセスメントの精度が重要になってきます。 通り一遍の形式的なアセスメントでは生活の質の向上には結び付きません。 利用者の価値観や人生観などにも踏み込んで把握し理解できる力が求められます。 アセスメント力という漠然とした技術ではなく、また、コミュニケーション力という曖昧なものでもなく、明らかに会話する力、質問する技術が要求されるのです。

なお、前述した通りアセスメントや訪問介護計画書の作成についても見直す必要があります。 アセスメントの様式を見直して、ADL/IADL・QOLが把握できる項目内容に一新したアセスメントシートが必要になります。 また、訪問介護計画書の様式、内容も新しいアセスメントシートに沿って見直しましょう。 特に「介護目標」の設定は、これまで以上に具体的かつ達成可能な目標であり、利用者のモチベーションを引き出す表記方法の工夫が求められるのではないでしょうか。

2018年6月26日掲載

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