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有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

介護事業の経営環境に影響する財政制度等審議会が示した
「新たな財政健全化計画等に関する建議」(平成30年5月23日)

5月23日財政制度等審議会から「新たな財政健全化計画等に関する建議」を麻生財務大臣に提出しました。

(詳しくはこちらをご覧ください)
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia300523/index.html

その中で、「Ⅱ.主要分野において取り組むべき事項」の冒頭に、「1.社会保障」(p15~32)が取り上げられています。

ここで、最も注目すべき項目は、「(1)医療・介護」ですが、これまで何度となく指摘されてきた重要な点を確認しておきましょう。

それは、今後の介護事業の経営環境を大きく変える可能性があり、その対応策を検討しておく必要があります。

厚生労働省ではなく、財務省の一審議会の意見だと言って侮れない内容ですので、十分に理解しておきたいところです。

さて、その内容を見てみましょう。


(p17より)

(1)医療・介護
①医療・介護と公費負担の現状
「医療・介護などの義務的経費は、患者等に実際にサービスが提供されて生じた給付費に応じて国庫負担が決まる。いかなる理由であれ給付費が増加すれば、それに応じて財政負担も自動的に増加する仕組みとなっており、予算の範囲内で執行額をおさめるという意味での財政規律が働く仕組みとはなっていない。」

これまでの社会保障制度を根底から変えようとする「財政規律が働く仕組み」への転換を示唆しています。要するに介護、医療のサービスが野放図に提供され続ければ、お金がいくらあっても足りなくなり、これ以上社会保障費だけを特別扱いにできないという意味に解釈しなければなりません。

続いて、改革の視点を3つ挙げています。

(p20より)

視点1)制度の持続可能性を踏まえた保険給付範囲 視点2)必要な保険級給付の効率的な提供 視点3)高齢化や人口減少を踏まえた給付と負担の見直し

視点1)の「保険給付の範囲」では、「公的保険としてどの程度の医療・介護サービスをどこまで給付するか、これまで十分に検討されてこなかった論点に向き合う時期にきている」として指摘していることから、今後この論点を俎上にあげて議論していくことになるでしょう。
これまでに、介護保険給付から要支援1,2及び要介護1,2を外すという意見が介護保険部会や介護給付費分科会等でも一部の委員から出されたものの、結論に至らまかった課題です。

視点2)の「効率的な提供」では、「国民負担で賄われる以上、できるだけ効率的に提供されることは当然である」とし、「これまで以上に限られた財源とマンパワーの中で、必要なサービスを過不足なく効率的に提供していく・・・・」という視点を示しています。無駄なく効率的なサービス提供をこれまで以上に求められることになります。

視点3)の「給付と負担の見直し」とは、2022年度から順次団塊の世代が後期高齢者になり始めることで、世代間の公平性の観点を引き合いに出して、給付と負担の割合を見直すべきだと論じています。具体的には、視点1)と関連し、給付の範囲や内容に制限を加え、より負担を求める方向で見直すべきだとしています。例えば、介護保険の給付範囲は、要介護3以上、利用者の自己負担は二割を基本とするのではないかと思われます。

最後に「④改革の視点を踏まえた具体的な対応」を見ておきましょう。

(p21~31)

④ 改革の視点を踏まえた具体的な対応
イ)「制度の持続可能性を踏まえた保険給付範囲」に係る改革
 (保険収載の在り方)
 (費用対効果評価の活用)
 (薬剤自己負担の引上げ)
 (受診時定額負担の導入)
 (ケアマネジメントの質の向上と利用者負担の導入)
 (軽度者へのサービスの地域支援事業への移行)
ロ)「必要な保険給付の効率的な提供」に係る改革
 (診療報酬改定)
 (薬価制度の抜本改革)
 (調剤報酬の改革)
 (介護施設の多床室における室料負担の見直し)
 (地域医療構想の推進)
 (医療・介護提供体制のコントロールの在り方)
 (医療費の適正化に向けた地域別の診療報酬の設定等)
 (保険者機能強化のためのインセンティブの活用)
 (頻回のサービス利用の適正化)
 (在宅サービスの供給量コントロールの導入)
 (介護サービスの事業所・施設の経営の効率化)
ハ)「高齢化や人口減少を踏まえた給付と負担の見直し」に係る改革 (内容は省略)

この「具体的な対応」に挙げられた項目だけを見ても、冒頭に申し上げた通り、今後の介護事業の経営環境が大きく変えるだろうということは、容易に想像できます。したがって、その対応策を検討し準備しておかなければなりません。

では、太字部分を中心に内容を確認しておきましょう。

(ケアマネジメントの質の向上と利用者負担の導入)

以前から導入の議論はありましたが、制度の理念に反するという反対の意見が多く、導入には至りませんでした。 しかし、財政制度等審議会としては、介護サービスの利用と同様に利用者負担を求めるべきだとしています。 その理由は、「利用者負担がないことで利用者側からケアマネジャーの業務の質についてのチェックが働きにくい構造になっていると考えられるため、ケアマネジメントの質の向上を図る観点等から、居宅介護支援等にも利用者負担を設ける必要がある。」と述べています。

今後、増々自立支援と重度化防止を目指すケアプランの作成が要求されるようになると考えられますので、 個々のケアマネジャーのケアマネジメント力の底上げ、居宅介護支援事業所としてのサービスの質を高めなければなりません。 特定事業所加算の取得程度の業務の質では足りないということなのでしょう。

(軽度者へのサービスの地域支援事業への移行)

軽度者とは、要支援1.2、要介護1,2であり、平成27年度から要支援者に対する訪問介護、通所介護は総合事業に移行し、 利用者の状態像や地域の実情に応じて、国による基準に基づく専門的なサービスだけでなく、基準を緩和したサービスや住民主体のサービスを実施することとなっています。

財政制度等審議会では、総合事業に移行した要支援1,2と同様に要介護1,2が利用する生活支援サービス等のさらなる地域支援事業への移行を進めるべきだと言っています。

仮に介護保険の給付対象が要介護3以上となれば、介護事業所の経営環境は一変します。そうならないという確証はありませんので、何らかの備えが必要でしょう。

(頻回のサービス利用の適正化)

訪問介護の生活援助サービスについては、平成30年10月から、全国平均の利用回数を大きく超えたサービス利用のケアプランを保険者へ届け出ることを義務づけました。

財政制度等審議会では、「今後、ケアプラン点検の実績を踏まえ、次期介護報酬改定に向けて、利用者の状態像に応じたサービスの利用回数や内容等についての標準化を進める必要がある。」としています。

これは、「財政規律が働く仕組み」という考え方に基づく介護報酬の改定を促すことになるのではないでしょうか。 わかりやすく言えば、利用者にとって必要なサービスであっても、標準的な回数を上回るサービス提供が許されない状況になるということでしょう。

(介護サービスの事業所・施設の経営の効率化)

「(介護事業所の)規模が大きければ、経費の効率化余地が高いこと等から、経営状況も良好な傾向にある。」として指摘しています。 また、「依然として介護サービス事業全体で見た場合、経営主体は小規模法人が多い。 介護サービス事業者の経営の効率化・安定化や、今後も担い手が減少していく中での人材の確保・有効活用等の観点から、 経営主体の統合・再編等を促すための施策を講じていくことが求められている。」と提案しています。

3年後の介護報酬改定時に、事業所の大規模化を促進する誘導的な介護報酬体系になるか、もっと強力に大規模化や統合・再編を進める政策が打ち出されるか、何らかの施策が打ち出される可能性があります。

そうなると、経営環境が大きく変わりますので、中小の介護事業者がこの大規模化や統合・再編の波に飲み込まれないためには、 今からでもできる経営基盤の強化、事業運営の改善が必須となるでしょう。

2018年5月31日掲載

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