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有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

『通所介護実態調査』の調査結果(概要/全体版)から見えてくるお泊りデイサービスの実体

昨年、神奈川県が実施した「通所介護実態調査」の調査結果(概要/全体版)を見られた通所介護事業所の管理者はどのくらいいるのでしょうか。 調査結果を知らなくても何も問題はありませんが、関心を持っているかどうかの差に過ぎません。

さて、この調査は、平成23年11月から12月にかけて行われました。 調査回答数1,242事業所のうちお泊りサービスを行っているデイサービス122事業所というから実に一割近いわけです。

この調査結果をみると、「通所介護事業所とは別の(お泊りサービスに関する)運営規程を作成しているか」という問いに対して「作成している」が60事業所で49.2%、 「作成していない」は58事業所で47.5%と、ほぼ二分しています。 これをどう見たらよいでしょうか。 介護保険外のサービスでも運営規程が必要だと考えている事業者とそうでない事業者が混在していることになります。

次にわかり切っていることですが、念のために宿泊対象者は誰かを訊ねています。 その結果、82.8%、101事業所が「通所介護利用者」と回答しています。 これは、保険外のお泊りサービスがショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護など)や 小規模多機能居宅介護のサービスとの競合関係にあるので、明らかに宿泊料の安さで利用者を誘導していると捉えることができます。 「ショートがなかなか取れないから」とか「小規模多機能は使いづらいから」と言った理由だけで安易にお泊りデイサービスを利用している例も多いのではないでしょうか。

調査結果の続きですが、「23年11月における1人あたりの最大泊数」はどのくらいかを聞いています。 6事業所で63名の利用者が「28~30日」の泊数となっているそうです。 このような利用者はもはや宿泊ではなく、俗にいう「ショートのロング」(ショートステイの長期利用)と同じことです。

見方を変えれば、帰る家があるから、どこまでも宿泊と言えますが、仮の住まいに居住しているという捉え方もできてしまいます。

また、建物の種別については、戸建て住宅が圧倒的に多く、80.3%で98事業所がこれになります。

戸建て住宅であるために、部屋数も限られますが、個室を有する事業所は28.7%で58事業所、二人部屋は23.0%で28事業所となっています。 気になるのは、その他という部屋(恐らく多人数利用)は68%で83事業所となっています。 戸建て住宅のリビングなどに4,5人の利用者を一緒に泊まらせていることは容易に想像できます。

さらに「部屋は男女別か」という問いには、必然的に前述の多人数利用の部屋から考えて、男女別にはなり得ません。 よって結果は、「(男女)別れている」と回答したのは、51事業所で41.8%、「別れていない」という回答は、66事業所で、なんと54.1%です。 半数以上の事業所が男女混合の部屋に宿泊させていることになります。 この実態の是非については、ここで論ずることはしません。 介護保険サービスを利用している要介護高齢者の尊厳を守られなければならないことは誰も知っているはずですが、 介護保険サービス外の宿泊サービスになった瞬間に尊厳を守られなくてもよいことになってしまうのでしょうか。

その次に、一泊の宿泊料について尋ねています。「1,000円以下」と答えたのは、77事業所でもっとも多く、 一泊1,000円という格安な宿泊料から考えて、宿泊では利益が出ないことは一目瞭然です。 では、なぜ宿泊料を安価にしているのでしょうか。 一月まるまる宿泊すれば、デイサービスも連日利用することになります。 本来の目的から逸脱する恐れがあり、介護給付費の無駄遣いになっていないか、多くの疑問が残ります。

しかし、一方で宿泊料12,000円という回答が3事業所、13,000円も3事業所ありました。 こちらの場合には長期連泊は想像し難い。これだけの料金を設定するからには、相応のサービスが提供されていなければならないと考えられます。

最後に「緊急時対応のための協力医療機関を位置付けているか」という問いには、「いる」と答えたのは、26.2%で32事業所、「いない」が72.1%で88事業所に上ります。 要介護状態の高齢者を宿泊させるには、ある一定のリスクが伴うことは言うまでもありません。 そのことが理解できない事業者はいないと思っていましたが、この数字を見る限りでは、これが現実であり驚くばかりです。 もっとも「何かあったら、救急車を呼びます」という安易な考え方を平然と口にする事業者もいるようです。 そういう事業者が増えているので、そもそもその経営姿勢が事故を引き起こすのではないかとさえ思えてきます。

この他にも様々な設問があり、興味深い結果が見られました。 ここに紹介した項目だけでも、お泊りデイサービスの実態を充分に知ることができます。 これが「問題が多いと言われるお泊りデイサービス」の所以です。

なお、この調査の最後に事業所側の「宿泊サービスに関する意見」を掲載しています。 中でも以下の二点は、利用者主体のサービス提供を実践していることが良く伝わってくる事業所ではないかと思います。

2012年7月23日掲載

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