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有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

研修・勉強会の賞味期限(2)

2008年7月のコラムに「研修・勉強会の賞味期限?」というテーマで書きました。 関連各方面の方々や訪問介護事業所の管理者、サービス提供責任者の方々からご意見やご質問などを頂戴した記憶があります。 改めて今回は、さらに続編的にこれまでのコンサルティング現場の実践を踏まえて考察したいと思います。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)の『第二章 訪問介護』には、 『第四節運営に関する基準』という重要な項目があります。 中でもその第二十八条(管理者及びサービス提供責任者の責務)は、訪問介護事業においては最重要項目です。 確認のため、以下にその条文を掲載します。

第二十八条(管理者及びサービス提供責任者の責務)

指定訪問介護事業所の管理者は、当該指定訪問介護事業所の従業者及び業務の管理を、一元的に行わなければならない。

2 指定訪問介護事業所の管理者は、当該指定訪問介護事業所の従業者にこの章の規定を遵守させるため必要な指揮命令を行うものとする。

3 サービス提供責任者は、第二十四条に規定する業務のほか、次の各号に掲げる業務を行うものとする。

  1. 指定訪問介護の利用の申込みに係る調整をすること。
  2. 利用者の状態の変化やサービスに関する意向を定期的に把握すること。
  3. サービス担当者会議への出席等により、居宅介護支援事業者等と連携を図ること。
  4. 訪問介護員等(サービス提供責任者を除く。以下この条において同じ。)に対し、具体的な援助目標及び援助内容を指示するとともに、利用者の状況についての情報を伝達すること。
  5. 訪問介護員等の業務の実施状況を把握すること。
  6. 訪問介護員等の能力や希望を踏まえた業務管理を実施すること。
  7. 訪問介護員等に対する研修、技術指導等を実施すること。
  8. その他サービス内容の管理について必要な業務を実施すること。

訪問介護事業所の管理者やサービス提供責任者の職責にある方で、この第二十八条を初めて読むと言う方はいないと思いますが、 読んだことはあっても突き詰めて理解しこれに沿った業務を行っているかと言うと、なかなかそういう方は少ないのではないでしょうか。

最近では、「介護サービス情報の公表制度」が5年目となり、研修の実施を確認する項目があるためか、 定期的に研修を実施しているという訪問介護事業所が増えているようです。 それはそれで良い傾向ですが、さてその研修の中身はどうなっているかと言えば、 とても研修とは言えないものから、研修の成果が見られるような効果的な研修を実施している事業所まで、善し悪しが明確に分かれます。【事業所の二極分化の進行】

もっとも効果が得られにくいと思われる研修は、従業者が集まって30分から60分程度の時間でマニュアルの読み合わせだけを行う研修です。 簡単言えば、マニュアルを読んだだけでも研修と称しているのです。 この研修の賞味期限は、研修が終わった瞬間から期限切れになるでしょう。 なぜなら研修と称した「マニュアル読み合わせ会」に参加した方々は、そのマニュアルに書かれていることを理解する間もなく、読んで終わるからです。
 一方、研修を定期的に開催し、しかも研修は業務の一環と位置付けて従業者に周知している事業所もあります。 また、定期的に行っていても、従業者が自主的に行う場合には、一見積極的で従業者の自主性を尊重しているかのようで、 良さそうに見えますが、参加する人としない人に二分され、事業運営に少なからず支障が起きることが考えられます。 そうなると、やはり研修は業務の一部と言う認識で計画的に開催されることが望まれます。 業務運営上必要とされる会議などと同様の扱いになるのが、本来の研修だと言えます。【研修は業務の一環】

前述の『第二十八条(管理者及びサービス提供責任者の責務)』とは、「ねばならない」という項目ですから、 その3項七にあるように「訪問介護員等に対する研修、技術指導等を実施すること」と、記載されています。 しかし、いつどの程度の頻度で行うかなどは明確に求めていませんから、事業所の判断となります。 年に一回でも開催すればよいと考えるか、計画的に毎月一回必ず行うという事業所もあるでしょう。 仮に研修や勉強会で学んだことがどれだけ記憶され理解されているかを考える時に、 2008年7月コラムでも申し上げたように研修に賞味期限が3ヶ月程度であるなら、年に数回は研修や勉強会を行うべきだということになります。 「計画的に研修を行う」とはどういうことかといえば、やはり事前に年間計画を立てて研修を実施することです。 さらには、その研修の効果があったどうかを検証する仕組みが必要になります。 実は、その研修の効果測定ができている事業所は少ないのではないかと思います。 ある管理者から「うちでは、毎月研修をやっています。研修は業務として位置付けているので、必ず全員に参加してもらいます。」と話を聞いたことがあります。 「それでは、その研修の効果があったかどうかはどうやって確認していますか」とお聞きしました。 残念ながらお答えがありませんでした。
一口に研修と言っても研修を行うことが目的ではなく、研修実施によって訪問介護のサービスの質がどの程度向上したかが重要なはずです。 研修開催そのものが目的となれば、次はより多くの参加者を集めることが目的化します。 そして、研修の内容よりも参加者が多かったことに満足してしまうのです。 それで研修効果もあったかのように錯覚しているのではないでしょうか。【研修効果の検証】

研修や勉強会には自ずと賞味期限があり、研修で学んだことが実務に活用されて初めて研修効果があったとするならば、 研修の賞味期限を回避するにはどうしたらよいのでしょうか。 訪問介護事業所の管理者やサービス提供責任者には多くの『責務』が課せられています。 そのことを忘れずに、なかでも研修や技術指導等を行うことが日常的に継続されていることが必要です。

最後に申し上げたいのは、研修や技術指導を行うには、指導する側のレベルアップが不可欠であることです。 従業者を一元的に管理すべき立場の管理者が、学ぶ機会をどれだけ持てているかが、その事業所の将来を決定付けてしまうかもしれません。

2010年8月18日掲載

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