介護コンサルティングネット:有限会社業務改善創研|介護コンサルタント福岡浩

介護コンサルティングネットへのお問い合わせ

利用者本位のサービスを実現するために、介護事業運営の仕組みを改善します。

ホーム2010年7月のコラム

有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

介護職員募集と求人誌の怪

介護保険制度が始まって10年が過ぎましたが、 当初から介護現場の職員の定着率が低いのは介護給付費が低く介護職員に十分な給与が払えないからだという見方がある一方で、 少ないとは言え、比較的定着率が高く介護職員のモチベーションも高い介護事業所や介護施設も存在します。 必ずしも報酬が高いか低いかだけの問題ではなさそうです。

すぐに辞められてしまうのか、常に介護職員募集を広告している介護事業所や介護施設が多くなりました。 入職、入社した職員が辞めるのを前提にしたような求人の方法が多くなり、 次第に違和感がなくなってきました。 よくよく考えれば、雇用している介護職員がいつ辞めてもよいように、継続的または定期的に求人募集を行うのは、 何だか奇妙な話だと思われないでしょうか。 「それは理想ですよ」と言われてしまうかも知れませんが、新任従業者が定着できるような新任者の研修プログラムがあって、 指導できるベテラン職員がいて、サービスに必要最低限の水準の知識と技術を身に付けさせることが確実に行えるなら、 低い定着率は少しずつでも改善するのではないでしょうか。 そういう提案にもすぐに返ってくるのは、 「そんな時間があったら、一人でも多くの要介護者にサービスを提供して売上を上げることを考えます。」という介護事業所の管理者がいます。 ハローワークなら費用も掛からないし、求人募集を掲示しておけば、いつでも応募や問い合わせがあります。

ところで、ホームページを開設する事業所、施設が増えてきました。 その目的が求人募集だと公言する経営者、管理者もいます。 そのような発想では人材育成を目指すことすらできないと言えます。 ある介護事業会社のホームページのトップページを開くと、最初に目に飛び込んでくるのが、「介護職員募集中」という文字です。 想像するに、余程人手に困っているのだろうということ、職員がすぐに辞めてしまうのだろう、職員がすぐに辞めるにはわけがあるだろう、などなど。 新任従業者の定着率が低いということは、何を意味するかと言えば、 「サービスの質が確保できていない、サービスの質が向上しない、サービス提供にバラツキが生じ易い状態が続いている」 などの問題を抱えているのではないかと、直感的に想像してしまいます。 本来のホームページの役割や目的は何かをよく考えないで作成している介護事業所や施設は、意外に多いのではないだろうか。

同じように新聞などの折り込み求人誌への求人募集広告を掲載している介護事業所や施設も多くなりました。 毎週日曜日に折り込まれる求人誌には、毎回同じ会社、施設の名前を見つけることができます。 その中でも、「明るい職場、初心者でも安心して働けます」などのキャッチコピーを見ると、背筋が寒くなります。 「和気あいあいの職場です。家庭的な雰囲気の中であなたの実力を発揮してください」となると、益々恐怖感すら覚えます。 募集している介護事業所、施設が自ら「明るい職場」とか「和気あいあいの職場」というのは、自画自賛しているだけではないだろうか。 もっと突き詰めて言えば、「明るい職場」や「家庭的で和気あいあいの職場」というのは、 その事業所や施設の際立った特徴でもなく、求人側が勝手にそう思っていると言うに過ぎないのです。 求人広告の営業担当だった人から聞いた話ですが、前述のような求人広告を掲載する会社は一時的には人を採用できても、 また、必ず求人募集をするので、常連顧客となるそうです。 折り込み求人誌は各社ありますから、A社がダメなら、B社で広告を出すといったことはよくあります。 会社(介護事業所、施設等)に何か特徴があって、同業他社との差別化戦略が明確化している会社は、求人広告の出し方が違います。 くどいようですが、「明るい職場」や「和気あいあいの職場」はその事業所や施設の特徴ではなく、 見せかけのキャッチコピーでしかないことは、それを見ている求職者もよくわかっているということに気付く必要があります。 たまたま、そのような求人広告で人材を確保したとしても、試用期間中にでも辞めるかもしれません。 それは、「明るい職場」ではなかったとわかったからか、入社した新任従業者が思い描いていた職場とは違っていたからか、 上司や同僚の指導が不十分だったのか、本人そのものにスキルや最低レベルの知識が不足しているような問題があったのか、どれもあり得る原因です。 よく考えてみると、多く場合に採用する事業所、施設側は、採用しても辞められてしまう原因の追究が十分に行われていないのではないでしょうか。

人材が定着しない大きな原因の1つは、求人方法に問題があるからです。 「家庭的な雰囲気の職場」も「明るい職場」も求人広告のキャッチコピーとして使わないことです。 2つ目は、せっかく新任従業者を採用しても、研修プログラムが確立していなかったり、 指導できる人材がいなかったりすれば、折角採用した人材もまた辞めてしまいます。 仮に研修プログラムもあり、ベテラン職員が指導を担当していたとしても、それぞれに何か問題はないのか、 常に課題の抽出と改善点を明確にし、新任従業者の定着を目指すことです。

最近、毎週日曜日の新聞折り込み求人誌を見たり、介護施設や介護事業所のホームページを見ながら、 私ならこうするだろうと考えることがある一方で、この事業所はこのままずっとこの状態が続くのだろうかと心配になります。 もっと心配なのは、そういう事業所や施設の介護サービスを受けている要介護高齢者の方々が、 不本意なサービスを提供されていないだろうかという心配があります。

2010年8月1日掲載

「介護コンサルタント福岡浩のコラム」の先頭に戻る