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有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

家族経営による介護事業の考察

 介護事業者は、経営規模にかかわらず大手も中小も経営者とともに その家族も事業経営に関わっていることが多いのではないでしょうか。 2000年4月の介護保険制度が始まる前後に起業した介護事業者の中には、女性経営者も多く見受けられます。 介護現場の経験が豊富であることから、民間事業者の参入が容易になったこともあって、 高齢者介護に情熱を傾ける多くの介護現場経験者が会社を設立し起業しました。

介護保険制度発足当初から介護保険サービスの需要は急速に伸びていたので、 介護事業経営者の企業努力がそれほどなくとも十分に業績をあげることができました。 しかし、3年に一度の介護給付費の見直しや5年に一度の法改正があり、 事業の継続性に少なからず不安が感じられるようになり、事業規模が一女性経営者では手に余る状況になると、 たまたま定年退職した夫を事業運営に加えて経営の安定化を模索する経営者も出てきました。

さて、介護事業の女性経営者がリストラや定年退職した夫を、 自らの部下として事業運営に関わらせる場合に、様々な事例を私は見てきました。 最初に、残念ながら成功例は少ないと言わなければなりません。 ただ単に現時点で事業が継続しているだけで成功しているというのならば、この話はここで終わります。 私が事業経営で成功していると考えるのは、
小規模でもあっても会社組織として機能していること、
そのことによって業績が向上していること、
雇用している従業者を育成していること、
最低でも以上の3項目をもって事業経営の成功と認められると考えます。

訪問介護員研修2級課程修了が、介護現場の初歩的な要件だと考えられますが、 それに現場経験が5年、10年あることで、十分に起業できると考えるのは間違えではないが、 正しくとは言えないのではないでしょうか。 しかし、女性経営者の多くは前述の条件で起業しています。 事業を展開する予定の地域にどの位の需要があるか、同業事業者がどの位あるか、 保険者の自治体がどのような方針で介護事業計画を進めているか等々を 事前に調べるマーケティングリサーチは全く行わないままに、起業しています。 それでも何とか介護事業を運営して来られたかも知れません。 ところが、この先も同じように運営できるだろうか?

事業規模が想像以上に拡大していきそうだと直感した女性経営者は、 自分の夫に事業運営、管理業務の全般を任せれば何とかなると思い、 他人を雇うリスクを避けて、夫の力を当てにする経営に切り替えました。 訪問介護事業の場合には、それまで女性経営者自らが管理者でしたから、 その管理者の業務を夫に任せることになります。 しかし、会社組織に長く身を置いてきた男性(夫)ならば、 すぐに気付くのは、介護事業運営の危うさや曖昧さ、 いわゆる「どんぶり勘定」経営や「自転車操業」経営と言った状態です。 ここで経営に対する考え方に大きな差があることが問題になります。 それで何が起こるかと言えば、「夫婦喧嘩」ならぬ、「経営方針論争」なのです。 「経営方針論争」と言えば、聞こえが良いが、「そんな経営じゃだめだ」と夫が言い、 女性経営者は「私が作った会社だから、文句を言わずに手伝いなさい」と言い返す。 夫は自分に介護事業の経験がないので、論争の果ては妻に有利だと悟ると、渋々従わざるを得ない。 しかし、「夫婦喧嘩」は常に勃発する状態が続きます。 この訪問介護事業所には、夫婦(女性経営者とその夫)以外にサービス提供責任者が2,3名いますから、 絶えず経営者夫婦の論争を目のあたりにすることになります。 そのうち、愛想を尽かして辞める職員も出始めます。

こんな話は作り話だと思われる方がどのくらいいるでしょうか。 これは現実なのです。こんな介護事業者に介護サービスを任せたいと思いますか。 サービスは提供しているけれど、会社が経営されていない介護事業所です。

もうひとつ事例を記しておきましょう。 夫婦間のパワーバランスが事業経営に影響する場合があります。 いわゆる俗に言う、「亭主関白」タイプの夫が、後から女性経営者の介護事業に関わると、 もっと悲惨な状態に陥ります。 大手企業で長年○○部門の部長を務めたという夫が定年退職して、妻の介護事業に加わることになります。 あくまでも社長は、かの女性経営者でありながら、家庭内の力関係がそのまま、 会社内でもはっきりと見えてしまいます。 「亭主関白」の夫が事実上の経営者にすり替わり、介護現場を知らないにもかかわらず、 サービス提供責任者に指示を出す。 すると、女性経営者はそれを否定し、別の指示を出す。 指示された方はどちらの指示を聞けばよいのか、混乱する事態に陥ります。 指示系統が不明確になり、サービス提供責任者や他の従業者は常に女性経営者とその夫のそれぞれの指示、 命令を受ける羽目になります。 そんな状況になれば、利用者に向かう姿勢は崩れてしまい、 いつしか経営者夫婦のご機嫌を窺いながら仕事をするようになります。 ここでも夫婦間の方針にズレが生じて、夫婦喧嘩が勃発します。 しかし、この喧嘩は「亭主関白」の夫が押し切り、介護事業経営はあらぬ方向へ進んでいく危険性に満ちて行きます。

その結果、利用者数は次第に減少し、私のようなコンサルタントに相談に来られますが、 実際には根本的な解決は不可なのです。 業務の改善を継続的に行う以前に夫婦間の関係性を改善、 いや改革、改良、改正しない限り事業経営は停滞し衰退の道を歩み始めるのです。

では、理想的な女性経営者とその夫の関係とはどうあるべきでしょうか。 私は数少ない事例を目撃していていますが、本当に少ないと実感しています。 しかし、見事に上手に経営されていて、前述のように、会社組織として機能して、 そのことによって業績が向上している、雇用している従業者を育成している、という3項目が実践されているのです。

他にも女性経営者の息子や娘が、事業運営に関わる事例もありますが、 その事例は別の機会に取り上げることとします。 これから先、女性経営者とその夫が、介護事業をどのように運営していくのか、 興味深く注目していきたいと思います。

2010年4月15日掲載

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