介護事業者の経営規模により届出の範囲が異なるものの、すべての指定介護事業者が「法令遵守責任者」を選任し、 国や都道府県等に届出ることになりました。 法令遵守責任者を選任し届出るということは、名ばかりの法令遵守責任者ではなく、 事業所において法令遵守のためのマニュアルや規程、ガイドライン等の整備を推進し、 事故発生や緊急時の対応マニュアル、介護職員の教育プログラムなど、 法令や倫理を遵守する仕組みが作られていることが求められていると思われます。
しかし、今回の法改正の中では、「法令遵守責任者」には、どのような役割があり、 それを遂行するためにどうすればいいのか、また、 法令遵守規程を具体的にどのようにして整備するのかといったことが明確に示されていません。
話が前後しますが、そもそも「法令遵守責任者」を届出させて、 都道府県はそのうち事業者にチェックに行きますということですから、 運営指導(実地指導)や監査と同じようなことをやろうと考えているようです。 介護事業を始めるにあたっては、最初に指定申請を行いますが、その際に、 都道府県が「申請した法人を介護保険法に合致している法人各である」と認めたから指定介護事業者になっているのに、 後付けで「法令遵守責任者」を選任しなければならないようなルールを作るのは大きな矛盾のように思えてなりません。
そうは言っても、もうすでに決まってしまったルールでやっていかなければなりません。 「法令遵守責任者」とは、日常業務上何をすれば良いのでしょうか。 例えば、介護サービス情報公表の調査でもおなじみの「倫理及び法令遵守に関する研修を実施しているか」 という確認事項に対して、それを確実に行っておくことは言うまでもありません。 多くの小規模零細の介護事業者は、研修と称する項目が十分に実施できていないように見受けられます。 仮に「倫理及び法令遵守に関する研修」の実施記録書があったとしても、 一部に改ざんしていると思われる場合もあります。 それこそが、法令遵守に反する行為ですので、内部告発などで発覚すれば、事業運営に赤信号が灯ります。
「法令遵守責任者」の届出義務がなかったとしても、元来、 法令遵守そのものは事業運営に不可欠なものであることは明白です。 そうであるなら、介護事業における運営(経営)マニュアルは、まさに「介護保険法」だということになります。 従って、「法令遵守責任者」という存在が必要かどうかということよりも、 介護事業経営者が法令を十分に理解していることが前提の介護事業運営だと言えます。
現時点でも、「利用者さんが喜んでくれることが私たちの願いです」と言いながら、 訪問介護事業を運営している経営者にありがちなのが、法令遵守の意味さえ知らないままで、 「利用者本位の介護サービス」を唱えている危うさです。 それは、野球でバッターボックスに立った選手がヒットを打って、三塁ベースに向かって走るようなものです。 ルールを知らないで、野球をやっている状態といえば、分かりやすいでしょう。
2009年11月7日掲載
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