介護コンサルティングネット:有限会社業務改善創研|介護コンサルタント福岡浩

介護コンサルティングネットへのお問い合わせ

利用者本位のサービスを実現するために、介護事業運営の仕組みを改善します。

ホーム2009年10月のコラム

有限会社業務改善創研のコラム(介護コンサルタント福岡浩)

介護コンサルタント福岡浩のコラム

「ご苦労さま」と「お疲れさま」

私が経営者の方との打ち合わせのために、ある介護事業所に訪問した時のことですが、 約束の時間より早く到着したので、事務所の応接室で外出中の経営者Aさんをお待ちしていました。 程なく経営者Aさんが帰社した時でした。 事務所にいた社員(サービス提供責任者らしき女性)が、 Aさんに向かって、「お帰りなさい。御苦労さまです。」と声をかけていました。 社員の一言に、一瞬どちらが社長なのかと思い、二人のやり取りに視線を向けましたが、 お互いににこやかに何か話してから、私の来訪を知らされたらしく、Aさんがこちらに来られました。

さて、「御苦労さま」と「お疲れさま」という言葉の使い分けは、 ビジネスマナーとして初歩的な心得だと思っていましたが、介護現場ではそうでもないようです。 介護業界に限らず、一般の中小零細の会社組織でも、社員、従業員の間で曖昧に使われている傾向があるのが、 この「御苦労さま」と「お疲れさま」です。

今後の10年、15年を考える時に、介護サービスの顧客は確実に団塊世代が中心となっていきます。 彼らは、顧客対応のひとつ一つに敏感に反応することが想像できます。 その一つが介護職員のビジネスマナーであり、 その言葉遣いにも違和感をもたれるようになるのではないかと考えられます。

一般的に「御苦労さまです」という表現を使うのは、 自分に対して直接、間接的に益をもたらす労働や作業に従事した人を労うときに用いられています。 訪問介護サービスを提供するヘルパーさんがサービス提供を終えて要介護者の家を出る時に、 その要介護者であるお客様から、「今日はお部屋をきれいにしていただいて、御苦労さまでした。」という 労いの言葉をかけることはあれば、その使われ方は正しいと言えます。

「お疲れ様です」が比較的身分に中立的に用いられるのに対して、 「ご苦労様です」は「奉仕」というニュアンスが伴って、目上から目下に対して用いられる傾向が強くなっています。 特に会社などではこれを目上に対して用いないことがマナーとして確立しているようです。

女性が多い介護現場では、この「お疲れ様です」、「お疲れ様でした」の方が、不自然さがないと感じます。 事務処理や会議などで、いつもより退社時間が遅くなった時に、「今日は遅くまで、お疲れ様でした。」と、 声をかけ合う介護事業所はどれくらいあるのでしょうか。 管理者やサービス提供責任者であっても、 ヘルパーさんには、「御苦労さまです」より「お疲れ様です」の方が、好感がもてる気がします。

「お疲れさま」も「ご苦労さま」も、これに一言付け加えると、 それぞれの言葉の効果が高まると思います。 例えば、前述の「今日はお部屋をきれいにしていただいて、御苦労さまでした。」という労いの言葉には、 何に対して感謝しているかが分かりやすいので、ヘルパーさんは人の役に立てて良かったと感じるのでしょう。

介護や福祉、医療などの現場に関わる方々は、 一般の民間会社と違ってビジネスマナーを重視しない傾向があります。 それは、介護や福祉、医療などのサービスの提供方法やサービスの質を優先するあまり、 組織としてのチームワークを円滑にし、 そのパフォーマンスを高めるために必要な挨拶や言葉遣いにまで配慮した現場組織は少ないと、 私は感じています。 事業所や施設などに訪問して、その職場に流れる空気を感じるときに、 「この事業所はチームワークが良さそうだ」とか、 「この施設は、挨拶の声が少ないし、声が小さい」と感じることがよくあります。

「ご苦労さま」や「お疲れさま」の他に、「一緒に手伝ってくれてありがとうございます」とか、 「あなたが手伝ってくれたから助かりました」などの言葉掛けは重要です。 しかし、言葉掛けは、使い方を間違えると逆効果になります。 従って、「お疲れさま」というべき相手と場面を正しく理解しておく必要があります。

気をつけなければならないのは、「ご苦労さま」や「お疲れさま」の遣いどころを知らないで、 思い思いに各自が、「ご苦労さま」と言ったり、 「お疲れさま」と言っていることです。 こんなことも教えていない事業所の管理者が、まだまだ多いのが現実です。

2009年10月27日掲載

このエントリーをはてなブックマークに追加

「介護コンサルタント福岡浩のコラム」の先頭に戻る