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2008年4月のコラム
「介護事業における目的と手段の連鎖」

職務上の使命感について論じる時によく引用される『石を積む職人』の話があります。
「ある時、町を歩いていた旅人が、石を積んでいる職人たちを見かけた。 旅人は、一人の職人に『あなたは何をしているのですか』と聞くと、 その職人は『見ればわかるだろう。石を積んでいるんだ。』と答えた。 その旅人はさらに別の職人にも同じ質問をした。 すると、その職人は『私たちは教会を造っているのです』と答えた。」という話です。

教会を造っていると答えた職人は、自分の仕事に使命感をもって取り組んでいることはすぐにわかります。 一方、石を積んでいると答えた職人は、教会を造ることを知っていても、そのことが使命感と結びついていないのか、 使命感そのものがないのか、指示された通りに石を積む作業を行なっているだけなのでしょう。 石を積むことが目的となっていて、教会を造ることが目的ではない。 また、教会を造っていると答えた職人も、教会がなぜ必要なのかということが意識されているかどうかはわかりません。 教会は、その地域の人々の心を癒すために必要です。 人々の心を癒すという目的のために教会が必要であり、教会は手段となります。 その教会を造ることが目的になれば、土台の石を積むことは手段となります。その石を積む職人を集め教会を造るには、お金が必要ですから献金を募ります。 石を積むことが目的となれば、献金は手段になります。 これが、目的と手段の連鎖です。以下にまとめてみましょう。

人々を癒す(目的) ??教会を造る(手段・目的) ??石を積む(手段・目的)??職人を集める(手段・目的) ??献金を募る(手段)

人々を癒す目的で教会を造る(教会は手段)、 教会を造る目的で石を積む(石を積むことは手段)、 石を積む目的で職人を雇う(職人は手段)、 職人を雇う目的で金が必要だから献金を募る(献金は手段)というように目的と手段が連鎖しています。

さて、介護の目的は何かと考えると、色々と意見が分かれることもありますが、 介護の社会化に伴って、要介護状態になられた高齢者の日常生活を支えるために必要なのが、 介護サービスということになります。 『介護保険制度』は、そのための手段として創設されたと言えます。 ここで、介護事業者は、介護保険制度を支える法律、法令等々を遵守しながら、介護サービスを提供しなければなりませんが、 法令遵守、いわゆるコンプライアンスが目的になってしまい、 肝心の介護サービスの提供が十分に達成できない状況になっているのが、最近の傾向ではないでしょうか。 特に昨年のコムスンショック以来、介護事業者の目的と手段の連鎖は次のようになると考えられます。

要介護高齢者の自立支援(目的) ??介護保険制度(手段・目的)??法令遵守(手段・目的) ??介護サービス提供の制限(手段)???

介護現場により近い現況を鑑みて話を進めます。 要介護状態の高齢者の日常生活を支え、自立支援を目的としていたにもかかわらず、 その手段である介護サービスが必要以上に供給されたり、制限されたりするのはなぜでしょうか。 売上至上主義に走れば目的と手段が変わります。

売上予算達成(目的) ??介護サービス提供量増(手段・目的)??営業活動(手段・目的)???

介護サービスの提供そのものが目的であっても、昨年以降の介護業界のイメージダウンで、 それを達成するための手段である肝心な人手が不足し、サービス提供が十分にできなくなっています。 そこで、政府は人手不足を解消する目的で、外国からの看護職、介護職の受け入れを模索しています。 目的が時として間違った方向に位置づけられると、とんでもない連鎖が始まります。

要介護高齢者の自立支援(目的) ??介護サービスの提供(手段・目的) ??介護職員の確保(手段・目的) ??外国人看護職員、介護職員の導入???

介護事業における目的と手段の連鎖は、他にもあります。 要介護高齢者の自立支援を直接的に対応しているのが、ケアマネジャーですが、 ケアマネジメントそのものにも目的、手段の連鎖があります。

要介護高齢者の自立支援(目的) ??居宅サービス計画(手段・目的) ??要介護者の介護目標達成(手段・目的) ??居宅サービスの提供(手段)

それぞれの目的・手段に関わる人々は、最終的な目的を意識しているのでしょうか。 その目的が意識されているかどうかは、その人の使命感やモチベーションの持ち方でも差があります。 「面倒で手間がかかる居宅サービス計画を立てなければならない」と思いながらケアプランを作成するケアマネジャーもいます、 「介護サービスを提供した後にその実施内容を記録するのが大変だ」という介護職員は、 その記録の必要性、その目的が十分に理解されているのでしょうか。

最後に、目的と手段は決して一つではないという例を申し上げます。 例えば、『仕事をする』目的は、生活するためであり、やり甲斐や自己実現のためでもあります。 この場合に、『仕事をする』は手段になります。 『仕事をする』には、『会社に行く』ことになりますので、それは手段になります。 『会社に行く』ためには、『電車に乗る』ので、それは手段になります。 『電車に乗る』には、『駅まで歩く』ことになり、それが手段です。 『駅まで歩く』には、『靴を履く』ということになります。 日常生活のなかには、あらゆる場面で目的と手段が連鎖しています。

やり甲斐・自己実現(目的)と生活(目的) ??仕事をする(手段・目的) ??会社に行く(手段・目的) ??電車に乗る(手段・目的) ??駅まで歩く(手段・目的) ??靴を履く(手段)

笑ってしまうかもしれませんが、靴を履く時に自己実現を意識しているとは思えません。 しかし、連日の残業で疲れていても「仕事だから仕方がない」と思いながら、朝のラッシュでも電車に乗ります。 上司に何を言われようと、「仕事だから仕方がない」と、自分に言い聞かせながら我慢して仕事をします。 生活するという目的のためだけなら、我慢の限界まで耐えるでしょう。 やり甲斐や自己実現が目的であれば、それが実現しないと感じた会社には帰属意識も使命感もなくなり、] 会社を辞めるのが当然です。 個々の仕事が細分化し、目的が明確化し難い状況になればなるほど、 目前の目的に囚われて仕事をすることになります。 使命感や自己実現を動議付けて意識させられるのは、経営者であり管理責任者です。 介護事業に限らず、目的と手段の連鎖が最終目的に対する使命感を意識できなくしているので、 今やっていることは何のため(目的)なのかと意識化する習慣が必要です。

2008年3月29日掲載

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