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2008年1月のコラム
年頭にあたって「オシムと岡ちゃん」

あけましておめでとうございます。

年のせいか、1年経つのが年々早く感じます。 昨年の年明けには、「ヒデとカズ」というテーマでコラムを書きました。 私はサッカーに親しんでいることで、プロスポーツの世界から学ぶことが、意外に多いと感じています。 とりわけ、選手とコーチや監督との関係、監督の采配、選手個々の把握の仕方など、様々な点で示唆に富んでいると思います。

さて、昨年11月16日に脳梗塞で倒れたオシム前監督は、サッカー日本代表の監督に就任する前は、ジェフユナイテッド千葉の監督でした。 オシム前監督は、肉体面で「走力」、精神面で「哲学」の二面的アプローチを掲げて、「賢く走る」「危険なサッカー」をキーワードとした指導で、降格危機・低迷から脱したジェフ市原(当時)をさらに改革しました。 「走るのは当たり前で、考えて走る」ことを選手に求めてきました。 「考えて走るサッカー」選手とは、運動量が豊富で守備能力の高い献身的なプレイスタイルで、複数のポジションがこなせる多様性があることです。

オシム前監督が目指しているサッカーは、南米サッカーのように個人技の優れた選手の集合体でなく、ヨーロッパに見られる個々の強靭な肉体を武器とする組織立ったサッカーでもない、日本人特有の敏捷性を生かした素早いサッカーとでもいうのでしょうか、そういう特徴を確立しようとしていたのではないかと思います。

同じように、ひところ日本の経済学者たちから盛んに聞かれた『日本的経営』という表現に似ています。 アメリカのような個人のパフォーマンスを最大限に引き出す業績主義とは違い、個々人の勤勉さや忠誠心、ムラ社会的な組織力で経営することを意味していたと記憶しています。 その後、バブル崩壊で失われた10年が過ぎ、過酷なリストラを経験し、気が付いたら『日本的経営』を捨てて、アメリカ的経営の象徴である業績主義や株主至上主義まで取り入れる企業が増えました。 しかし、ここ数年、その歪みや綻びが出始めきました。 だから、『日本的経営』を見直そうとする動きもあります。

話は、サッカーに戻りますが、オシム前監督の後を引き継いだ『岡ちゃん』こと岡田監督は、10年前に日本代表監督に就任し、ワールドカップフランス大会初出場を果たしました。 この時の監督就任は、その前任だった加茂監督の更迭によって突然決まりました。 当時、加茂監督の下でコーチとして監督を支える立場だった岡田氏は、成績不振を理由に解任された加茂氏に代わり、監督を引き受けることになったわけです。 今回は状況が違うとはいえ、突然に監督候補に浮上し短期間で監督就任となった点では共通しています。 日本サッカー協会の決断は、オシム前監督の「考えて走るサッカー」にもっとも近い考えをもった、オシムイズムを継承するに相応しい監督ということで岡田氏を指名しました。 オシム前監督が病に倒れることがなかったら、きっと、日本人の特徴を引き出した日本的「考えて走るサッカー」が確立されたかも知れません。

日本サッカー協会が目指す日本代表チームとは、結局のところ、南米型でもなくヨーロッパ型でもない日本人の特徴を生かしたサッカーを標榜していくことではないかと思います。 なぜか、『日本的経営』に似ているように感じます。 バブル崩壊後、出口が見えない日本経済をどう立て直すかというテーマに対し、アメリカ的経営の象徴である業績主義や株主至上主義に飛びついてみたものの、その成果に疑問を感じ始めた時、やはり、日本人には馴染まないのではないかという疑念が膨らんできました。

私の個人的な見解ですが、サッカー日本代表監督に就任した岡田監督は、細かいパスをつないで、最速で相手ゴールに到達することを目指してように思えます。 それを実現するには、オシム前監督が選手に求めていた「考えて走るサッカー」が必要です。 複数の選手が、3,4つ先のパスのルートまでも統一したイメージを共有できることです。 しかもそれが瞬時に行なえて、相手ゴールに到達することです。

介護事業では、このような「統一したイメージを共有できる」という状態にない事業者が少なくないです。 ケアマネジャーと、訪問介護事業所管理者、サービス提供責任者、担当ヘルパーさん、それぞれが同じ介護目標の達成に向かっていることを意識できているのか、個々の役割と同時に、例えばヘルパーさんがケアマネジャーの業務、役割を理解できているのか、いつも疑問に思う点です。 介護サービスのチームケアは、サッカーのチームプレーに等しい。 プロのサッカー選手が、チームプレーに徹して自分の役割を果たすと同時に、攻撃のイマジネーションや守備体系の意識統一を図るのも、最終目標が明確だからです。

プロの介護事業者なら、考えて行動する人材を育てるのは当然です。 個々の業績を重視する業績主義ではなく、チーム、すなわち組織としての目標の実現に向けて、個々人が何をすべきかを考えられる人材で構成される組織でなければ、質の高い介護サービスは望めません。 オシムや岡田監督のようにはなれなくても、学ぶことは大いにありそうです。

2008年1月10日掲載

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