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2007年11月のコラム:
「なぜ、PDCAサイクルが回らないか」

ちょうど2年前からコラムを書くようになりましたが、『PDCAサイクル』をテーマにしたことがなかったことに気付きました。 研修やセミナー、勉強会等々では、何度となくテーマに掲げてお話をしたことがありましたが、改めて文章にするのは初めてかも知れません。

私が前職でISO9001認証取得プロジェクトに関わり、 認証取得後も内部監査員を務めた経験やその後認証取得審査員資格を取得するまでの研修課程で学んだことのひとつは、 ISO9001の基本的な思想の根底にある『PDCAサイクル』です。

ISO9001認証取得後、組織(会社、事業所等)の継続的な改善を目指し、 最終的に顧客の満足度を高めることが事業運営の目的だとすれば、 介護保険サービスも同様に『PDCAサイクル』を回すことになります。

気付かれている方は少ないようですが、 介護保険サービスの要である居宅サービス計画(ケアプラン)は、まさにそのものです。 Plan(計画)、Do(実施、実行)、Check(検証・検査)、Act(処置)のサイクル化が仕組みとして機能するように決められています。

ケアプラン作成は、そのものがPlan(計画)に相当します。 そのケアプランに基づいて各サービスを提供することが、Do(実施、実行)です。 その後に介護目標の達成度を評価することが、Check(検証・検査)で、 その結果、見直しや変更を加えることがAct(処置)となります。 ここまでの流れは言葉では理解できますが、実際に現場ではどうだろうかと言えば、残念ながら実行性に乏しいと言わざるを得ません。

その実効性が乏しいのは、Check(検証・検査)の段階で、モニタリング等が不十分であり、計画と実行との整合性を確認する力量が不足しているからです。

時には、計画がその通りに実行されないこともありますが、 その原因の多くは事前に行われるアセスメントの精度が低いことが挙げられます。

しかし、初回のアセスメントが不十分であっても、 Check(検証・検査)の段階で計画に基づいた実施結果の振り返りが確実にできていれば、 Act(処置)の段階で、再計画の立案が現実に見合った内容になるはずです。

事業全体の業務改善に置き換えて考えてみれば、年間事業計画が策定され毎月の目標予算、行動計画があるはずですが、 それ自体が存在しない介護事業所もあります。 自社の介護事業が計画的に進められていないことは、 顧客である介護サービス利用者やその家族に不安を与えていないのか、 サービスの質はどのように担保されているか、気になるところです。

事業計画もケアプランと同様に、『PDCAサイクル』を意識しておく必要があります。 年度の初めには年間事業計画が作成され、今年度の目標は、定量的目標として年間売上額、年間総利用者数などがあり、 定性的目標には、「クレーム、苦情に迅速に対応し、48時間以内に解決する」というような項目があげられるかも知れません。 事業計画に沿って実施し、毎月必ず前月の振り返りを行います。 これがCheckになります。 年間事業計画はあっても、この振り返りが行われない介護事業者はかなり多いのではないかと思います。 目標予算と実績が乖離しているならば、 その原因を明らかにして対応策を検討し計画の修正が必要なら計画を見直します。 事業計画に基づいた行動計画を変更することもあるでしょう。 また、計画通りに事業実績が推移している場合でも、目標予算を達成した要因を明確に把握することは重要です。

これらの一連のアクション(業務)は、 常に『PDCAサイクル』を回しているという意識のもとに行われることが必要です。 運営の仕組みを改善するには、問題や課題の発見、抽出のスピードと、その解決策、対応策を検討し、 複数の選択肢から最適な方策を選び実行することです。 言うのは簡単ですが、実行しようとすると様々な障害があり挫折することがあるでしょう。

『PDCAサイクル』は、第三者である外部のコンサルタント等が半ば強制的に指導していても十分に機能するとは限りません。 まして、介護事業経営者が自力で『PDCAサイクル』を回すのは至難の業でしょう。 結局、経営者の強い意志とトップダウンのリーダーシップで遂行する以外に方法はありません。 それができないので、成り行き任せの事業運営になり、業務の改善は継続的に行われず、 むしろ『モグラ叩き』状態の対処法に終始することになります。 何か問題が起きてから、反射的に対応し感情や短絡的な思考によって結論を導き出してしまい、 その経営者の弱点を露呈するような側面も見られます。

私自身、多くの介護事業経営者と接していて、どこを見るかと言えば、 論理的思考に基づく会話が成立しているか、冷静な判断ができるか、 仮説を立て自社のあるべき姿が見えているか、等々です。

事業運営におけるPDCAとは、計画(Plan)立てから始まります。 だから、自社のあるべき姿が漠然としていては計画立てができません。 さらに計画通りに実行(Do)するには、論理的思考と説明能力をもって周囲の関係者を巻き込んでいく力が必要です。 その後の振り返り(Check)では、冷静な判断力が求められます。 より厳しい目で事業実績を見なければ、本来の業務改善に繋がりません。 振り返りから得られた結論(評価)によって業務の見直しが行われ、計画を手直しすることになります。 大企業では、下方修正とか上方修正という大掛かりな事業計画の修正となります。

新年度当初に策定された年間事業計画が経営者の机の中にしまわれたままだったり、壁に貼られているだけで、Check、Actまで回らないことがいかに多いことか。 介護サービスの質の向上は、まず最初に事業運営における『PDCAサイクル』が回せるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。

2007年11月1日掲載

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