介護コンサルティングネット:有限会社業務改善創研|介護コンサルタント福岡浩

介護コンサルティングネットへのお問い合わせ

利用者本位のサービスを実現するために、介護事業運営の仕組みを改善します。

ホーム2007年10月のコラム

有限会社業務改善創研のコラム

介護コンサルタント福岡浩のコラム

2007年10月のコラム:
「権限と責任」

介護事業に限らず、業務を遂行する組織には、「権限と責任」があります。 しかし、残念なことに、日本の企業社会における組織内の「権限と責任」は極めて曖昧な状態が常態化しています。 例えば、ある介護事業所の所長に「あなたの権限はなんですか?あなたの責任はなんですか?」と尋ねると、「・・・・・!」でした。

介護サービス情報の公表制度で確認される項目にも、「管理者及びサービス提供責任者の役割と権限について明記された職務権限規制等があるか」を確認しています。 サービス提供責任の役割は、利用者のアセスメントを行ない、訪問介護計画書を作成し、訪問介護サービスを実施するために訪問介護員を手配する。 そして、その提供する訪問介護サービスが、介護目標の達成するために寄与しているかどうかを確認し評価する。 ということなりますが、それ以外にも役割はあります。

では、サービス提供責任者の権限は何か、訪問介護員が提供したサービスは、必ず「サービス提供記録書」に実施したサービス内容が記録されますので、その記録書を確認しサービスが提供されたことを正式に承認する権限があります。 このようなことを意識して業務に就いているサービス提供責任者は少ないと思います。 そのようなことを意識せずともサービスは日々提供され、利用者が喜んでいれば、それでよいという、自己満足に近い感覚で業務が遂行されているからです。

では、さらにそのサービス提供責任者を管理する管理者の役割は何か、また、権限は何かということですが、このコラムを毎回欠かさず読んでいる方なら、ちょっと考えればお分かりになると思います。

役割と権限は似ているようで、少し違います。 それは、前述したとおりですが、乱暴な言い方をすれば、判子をついて承認する行為が権限と言えなくもないでしょう。

さて、責任について考えて見ましょう。 責任とは英語で、「responsibility」と書きます。 [Response]と[ability]という単語で構成されていることがわかります。 レスポンスとは、『反応、答え、返事など』の意味があります。 よく、仲間うちでは、「あの人は、レスが早い」という表現を使います。 その意味は、反応が早いとか、打てば響くということでしょう。 そして、後半のアビリティとは、『能力、できること』という意味になります。 責任とは、『反応能力、返事ができること』という直訳になります。 もう少し、要約すれば、『刻々と変化する状況に対応し正しいことを導き出す能力』という解釈ができそうです。 「職を賭して・・・・・」ということが果たして責任かどうかわかりませんが、辞任する前に責任を負う行動が取れていなかったのではないかと思えます。 分かりやすく言えば、「責任を取って辞任する」ではなく「責任が負えないので辞任する」ならば理解できます。

介護事業の現場では、利用者宅での事故やミスが起こります。 どんなに注意していてもミスや失敗が起きてしまいます。 掃除をしていたヘルパーさんが掃除機でふすまを破ってしまったというようなことはよくあります。 この失敗に対してどのような対応が考えられるかは、くどくど書かなくてもお分かりいただけるでしょう。 問題は、その対応方法の判断と速さです。 それは管理者の責任ですが、「ふすまを破った」という第一報から利用者への謝罪、対応方法の説明、対応策の指示、実行等の速さが重要です。 管理者には謝罪する最終責任があり、対応策を指示し従業者に実行させる権限があります。

日常業務においては、管理者の権限とは人事や高額な購入物の決済など多岐にわかります。 従業者を募集し面接して採用を決定する権限も管理者です。 事業者によっては、その権限を下に下ろしてサービス提供責任者に委譲している場合もあります。 簡単に言えば、決済が必要な事案のすべてに関与し検討して結論を出すのが、管理者の権限ですが、その決断、決済によって生じた問題が発生すれば、直ちにその責任はやはり管理者にあるということになります。

そう考えてみると、近年、企業の不祥事、事故、不正行為、法規範の逸脱などが多くなっていますが、そのたびに当事者である代表責任者(社長など)が、 「あってはならないことが起きてしまい、大変に申しわけなく思っています。深くお詫びするとともに今後は二度とこのようなことが起こらないように万全の体制を整え、再発防止を徹底してまいります。」というようなコメントを吐いて終わります。 意地悪な解釈をすれば、 「今までも時々こういうことは起きていたけれど、何とか隠しておいたのに今回は運悪く見つかってしまったので、取りあえず謝っておきます。 今後は、さらに発覚しないようにするにはどうしたらよいかを考えてまいりたいと思います」というコメントに聞こえてきます。

彼らは、組織のトップであったり、それと同等の立場ながら、自らがどのような責任を果たそうとしているかは説明しません。多くの場合、謝罪は形式的であり、不祥事などの対応策の詳細については説明しません。 せめて、対応の方針でも話すなら良いのですが、それもありません。

介護事業者も一般企業と同様に組織である以上、組織の構成員である従業者には、個々の役割(業務)が分担されていて、権限も付与されています。 その権限に見合った責任もあるはずです。 しかし、それが明確に文書化されていない事業者がほとんどです。 だから、その証拠に、ひとたび事が起こると、「それは私の仕事ではない、私は担当ではないから関係ない」というように無関係を装ったり、「最初からそんな責任があるとは聞いていない」という勘違いや思い違いが起こり、起きてしまった問題をより複雑化しています。

どのような業種、業態でも、その職位には「権限と責任」があります。 職務に就く前にその「権限と責任」を明確にしなければ、その会社の顧客に最良サービスは提供できないはずです。 顧客にもっとも近い従業者に、より多くの「権限と責任」が委譲されれば、そのサービスへの顧客満足度は高まると言えないでしょうか。 現場従業者の「権限と責任」がほとんどなければ、そのサービスは味気なく、最低限のサービスでしかなくなります。

「権限と責任」の範囲をどのように規定するかは、時には経営者の人間性にまでふれなければならない話になりますので、深堀しませんが、その範囲を決めておく必要は、大いにあると考えます。

2007年10月1日掲載

このエントリーをはてなブックマークに追加

「介護コンサルタント福岡浩のコラム」の先頭に戻る