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2007年7月のコラム:
創業者の経営理念はどこへ

コムスンショックが続くなかで、グッドウィルグループ(GWG)が抱える介護事業の売却に名乗りを上げた企業は30数社もあるそうです。
介護業界大手のニチイ学館、ツクイ、セントケア、ジャパンケアサービスなどの介護事業者以外にも異業種の企業からも関心を持たれています。
GWGは、出来る限り高値で売り払える環境ができたとも言われています。

しかし、それほどの資産価値があるのかどうか・・・・・
売却前にコムスンの利用者が自主的に他の事業所に移り、職員も転職してしまえば、もぬけのからになり、その価値はほとんどない状態になります。
建物や什器備品等々の残存価格を算定するくらいのものでしょう。

さて、本題に入りますが、コムスンの簡単な社歴を振り返ってみましょう。

創業者は折口氏ではなく、榎本憲一氏(故人)です。
北九州市で地域の要介護高齢者を1年365日24時間、介護サービスを提供することを掲げ、1988年に事業を立ち上げました。
その後、九州では初めて、在宅介護サービスでシルバーマーク(財団法人シルバーサービス振興会認証)の認証を取得しました。
そして、1991年には、在宅入浴サービス(現在の訪問入浴介護)の事業を開始しました。

さらに、1992年に夜間巡回介護モデル事業を全国に先駆けて展開し、 94年には夜間巡回介護モデル事業が福岡市の補助事業となりました。同年夜間巡回介護サービス事業が開始されました。 故榎本氏は、介護保険制度が施行される10年以上も前に、 在宅介護サービスの必要性に着目し、地域の主婦層を巻き込んで事業を立ち上げました。
その理念は、恐らく地域密着サービスであり、地域貢献型サービスだったはずですが、1997年、GWGの資本参加をきっかけに折口氏の意向が強く経営に反映されるようになりました。
資本参加から数年で、完全な子会社となり、現在に至ったわけです。

同じくGWGの傘下にある日本シルバーサービスのホームページには、「桜湯園は昭和58年、伊豆修善寺に始まります。創設者が認知症で寝たきりの父親の介護を経験し、自分と同じように介護に直面している人のために何かできることはないかと思い、別荘を改築して6床の託老所(今のグループホーム)を開きました。
桜湯園はたくさんのお客さまと出会い、介護の経験を積み重ねてきました。」という起業の経緯を紹介しています。

また、今コムスン買収に手を上げて注目されているワタミは、「Rの介護」を買い取り、「ワタミの介護」と改めました。
旧株式会社「Rの介護」は、神奈川県及び埼玉県に有料老人ホーム「レストヴィラ」を展開し、20数年の歴史と実績を元に、高水準で低価格の手厚い老人介護を提供していました。

北九州で始まったコムスン、伊豆修善寺の6床の託老所から始めた桜湯園、そして、有料老人ホームの草分け、レストヴィラ。
この三者に共通することは、創業者の崇高な理念があったこと、そして、買収によってその理念が変質し創業者の思いが継承されているとは言いがたい状況になったことです。

特に、GWGに取り込まれたコムスンと桜湯園(日本シルバーサービス)は、それが明らかに証明されてしまいました。
ワタミの介護は、名前が変わったことにより、ワタミ色が鮮明になったことが結果的に良かったかどうかは、これからを見なければなりません。

会社が、創業者の意志を守り通すことの難しさを物語る例は、他にもたくさんありますが、介護事業だからこそ、これでよいのだろかという疑問が残ります。
コムスンも桜湯園も、創業者の手を離れたときから、そのブランド力や知名度を利用した拡大基調の事業展開だったようにも見えます。

また、顧客本位の介護サービスを目指した創業者から、利益追求優先の経営に方向転換したとも受け止められるのが、今回のコムスン事件から読み取れます。

民間事業者は、営利目的であることは当然ですが、 その前に利潤と引き換えに顧客を満足させるだけのサービスや財が提供されているかどうか重要です。
「いつ電話しても事業所にはだれもいない」、ちょくちょく担当ヘルパーが変わる」といった苦情が多かったコムスンは、 サービスの質より量の拡大を優先させたことが、事件の原因だったのではないでしょうか。

しかし、コムスン以外の介護事業者はどうかと言えば、大なり小なり同じ、五十歩百歩だと言わざるを得ない。
そもそも、介護事業を起業したときに、その経営理念に基づいて事業が運営される仕組みをつくっていなかったのではないかとうかという疑問を感じます。
コムスンの創業者には、確固たる経営理念がありましたが、GWGに吸収されてからは、残念ながら創業者の思いが継承されなかったのです。

今後のコムスンがGWG傘下からどこへ移るかわかりませんが、願わくば、創業時の理念に回帰して、本来の「あるべき姿」になることを期待したところです。

2007年6月28日掲載

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