以前から私も申し上げているのは、介護サービスの質を論ずる時に、自社事業所のサービスを支えている介護職員の学習、すなわち、研修カリキュラムや研修計画があるのでしょうか? 研修を実施した後に、その効果を確認し、研修内容の習得状況を受講者個々に判定することは重要だということです。
習得したことは実践を重ねることによって会得されます。 会得された介護技術や知識、経験は、後進のために伝承されなければなりません。 一般的に介護業界では、習得した介護技術や知識、経験が、自己の努力によるものだという思い込みがあり、後進に伝承されない傾向があります。 さらに人材定着率が低いことも手伝って伝承されない状況が続いてしまいます。 介護業界に限らず、日本全体が「学習」「習得」「実践」「会得」「伝承」の仕組みが崩れているような気がするのは私だけなのでしょうか?
余談ですが、この仕組みが崩れ始めたのは、皮肉にも日本の高度経済成長期からではないかと考えられます。 人口が都市に集中する『都市化』によって、日本の伝統文化を支えた「家」文化が崩れ、急速に「核家族化」が進行してきました。 これによって、日本全体の「学習」「習得」「実践」「会得」「伝承」の仕組みが崩れてしまったと考えられます。
今こそ、この仕組みを再生する必要があると思いますが、簡単にできることではないと言われる方も多いでしょう。 確かに相当意識して取り掛からなければ簡単にはできないでしょう。ある知人が言っていました。 『勉強したことがすぐにプラスになるわけではない。(しかし、)勉強しない人は確実に後れをとっていく』と。
これからの介護事業においては、経営者自らも学ぶ姿勢が求められるということを、ずっと以前から私は申し上げてきました。 経営者自らが学ばなければ、社員や従業員に研修受講を求めることはできません。 仮に強制的に研修を受けさせても「習得」に至らないでしょう。 「習得」しなければ、「実践」もできません。勿論、「会得」して「伝承」することなどはあり得ません。
どんなに小さな会社でも、世間、世の中、地域社会を相手に経済活動を行っているということは、顧客から学び、自らも学ぶことで、その経済活動の社会的貢献度が増していくことになると考えられます。 オフィシャルであれ、プライベートであれ、会社組織も個人も、「学習」「習得」「実践」「会得」「伝承」を意識して行動したいものです。 そして、「伝承」は、「継承」と言えるようにならなければなりません。
この一連のサイクルは、残念ながら、終身雇用制や年功制の崩壊とともに崩れたようですが、職場の先輩と後輩、上司と部下の関係や職人の師匠と弟子、親方と弟子の関係は、形式的には存続していますが、信頼関係を伴う関係性は、本当のところどうなのでしょうか。 実はこの関係性が見直されていますが、正規社員より非正規社員が多くなった会社組織では、この関係性を回復するのは、様々な困難があるようです。 しかし、キャノンの御手洗社長も言っているように「終身雇用堅持、年功序列から実力主義へ」という長期ビジョンの中には、非正規社員であっても長期雇用によって、職場に新たな信頼関係を築くことが可能ではないでしょうか。 「学習」「習得」「実践」「会得」「伝承」の仕組みづくりのキーワードは、どうやらここにありそうなきがしますが、皆様はどう思いますか?
2006年5月31日掲載
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