ISO9001を認証取得した組織(会社)は、不適合製品(サービス)が発見されると、必ずその不適合の原因を究明しなければなりません。 しなければならないと言うよりは、原因究明は当然の仕事となっています。 ISO9001『品質マネジメントシステム』が十分に浸透し、定着した組織では、原因追究が徹底されています。 しかし、そうでない組織では、「原因追究」が次第に「責任追及」になってしまい、最後には、真の原因が特定しないまま、ある特定の人の責任を追及し当人が謝罪したり、始末書を書いて終わります。 誰かのせいにして「原因追究」ができなければ、「是正処置」につながらず水平展開もできません。
介護事業の場合に置き換えて考えれば、不適合な介護サービスが発生するとは、どういうことなのでしょうか? 不良な介護サービス、すなわち、顧客に引き渡してはいけないサービスです。 サービスは復元性がないために、一度引き渡した(提供した)サービスは元には戻せません。 例えば、認知症の知識がない新米の介護職員が、認知症の要介護高齢者の介護サービスを提供したなら、それは、明らかに「不適合サービス」となります。 勿論、「認知症要介護高齢者には、認知症の知識、経験がある介護職員が対応すること」という決まりがあることが前提です。 この問題の原因は、「新米介護職員が認知症の知識がない」と言うことを知らなかった管理者がコーディネートしたから、その管理者が悪いということになるのでしょうか? ここで責任追及が始まり、真の原因追究がフェイドアウトします。
本来的には、「なぜ、なぜ、5回」が必要です。 トヨタの社内では、日常的に行われているのが、「なぜ」を五回唱えることが原因究明の第一歩とされています。 管理者が知らなかったことは、それ自体に原因がないのでしょうか? 知らなかった管理者本人が悪いということで終わらせると、同じミスがまた起こります。 管理者が知らなかったのは、なぜでしょうか?これを追究しなければなりません。 「知らない」状態にあったことは、本人に確認する必要があるから、「責任追及」のように問い詰めることになります。 ここで、『原因追究』VS『責任追及』が始まるのです。
ISO9001が求めているのは、継続的改善です。 そのためには、不適合サービスが発生したら、その原因を追求し、原因となった仕組みを見直して是正処置を行います。 さらには、このことを他の部門部署にも知らせて、同じ不適合サービスが起きないよう予防することを奨励しています。 今や建築偽装事件は、責任の擦り合いの様相を呈していますが、「早期原因究明、改善策検討」などと言いながら、原因が何だったのか、誰も公式に言わないのでのです。 その結果、被害者住民は、救済されないままです。
病気や怪我を治療する医療機関や介護サービスを提供する会社は、患者や要介護者に対してそのサービスに責任を負わなければなりません。 また、一方で不適合サービスが提供されないような仕組みを構築しなければなりませんが、万が一、不適合が発生した場合にもその原因を追求し是正する仕組みもなければなりません。 それが十分にできない責任はトップマネジメント(経営者)にあります。 経営者は常に『責任追究』のリスクがあるからこそ、介護現場、医療現場における不適合の発生には、徹底した『原因追究』を求めなければなりません。
さて、これまで活躍?してきた「在宅介護支援センター」は、今後どうなるのでしょうか。 ほとんどの「在宅介護支援センター」が、居宅介護支援事業所と同様の業務内容で存続してきたようですが、今後は何をするのでしょうか。 本来「在宅介護支援センター」に課せられた業務があり、それを充実に遂行してきたセンターもあるようですが、少数です。 従って、包括支援センターの創設が公表された当初に、早々と看板の付け替えを決めた保険者もあり、ほとんどがそうすると思われます。 もし万が一、平行して存続するならば、業務が重複することにもなり、人員配置の面からも不可能だと言わざるを得ません。
では、「在宅介護支援センター」は失敗だったのか、さあ、原因究明のために考えてみましょう。 一つの仮説を立ててみると、「もし、在宅介護支援センターが本来の機能を十分に果たしていたならばどうなっていたのだろうか」という疑問が湧いてきます。 これから創設される包括支援センターは必要ないということになります。
「在宅介護支援センター」は失敗だったとすれば、それはなぜだろうか? 本来、「在宅介護支援センター」は何をすべきだったのだろうか?それがなぜできなくなったのだろうか? 以上の三点の疑問が、原因究明の鍵でしょう。 もうひとつ、「在宅支援介護センター」は誰が運営しているのでしょうか?
さて、最初の疑問は、前述したように「在宅介護支援センター」が居宅介護支援事業所と同様の業務を行っているから、本来業務をしなくなったということです。 現行の要介護用支援の認定区分がありながら、要支援者は実質的に要支援サービスが提供されていなかったし、その仕組みがなかったと言えます。 また、「在宅介護支援センター」の運営は、保険者が民間会社や社会福祉法人、社会福祉協議会等に委託しています。 委託された事業者は、センタ-に来る要介護者や要支援者への相談、援助業務からケアプラン作成まで一貫して行っているうちに、居宅介護支援事業所化してしまいました。 むしろ、積極的に事業所化を行って、介護給付費を受け取る業務が中心になりました。
包括支援センターも同じ過ちを犯す可能性が高いと思いませんか。 原因追究がなく是正処置につながっていないとすれば、この仕組みの不具合が生ずることは目に見えています。
2006年2月25日掲載
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